「イケメンは愛なんて絶対くれないの」「でも、人生変えてくれてありがとう」…バツイチ独身アラフォーマンガ家が出会い系アプリで得たモノ

――昨年11月にドラマ化もされたコミックエッセイ『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』(幻冬舎)を描いたマンガ家、松本千秋さんが、出会い系アプリでイケメンたちと出会って手にしたモノとは――。
(構成/里中高志、撮影/後藤秀二)

――『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』。いろんな意味で衝撃的な内容でした。松本さんが利用した「ティンダー」というアプリは、本作に登場する男の子によると、使っている男の目的は9割ヤリモク(セックス目的)らしいですが、松本さんがあえて婚活アプリではなく、このアプリでいろんな男性と会ってみようと思ったのはどうしてだったのでしょう?

松本 最初は女友達に、いわゆる婚活アプリ、お見合いアプリといわれるものを見せてもらったんです。でも、そこに登録している男性たちがあまり魅力的に思えなくて。『婚活アプリ』なんですから、真面目なプロフィール、無難な服装のサラリーマンがたくさん出てくるのは当たり前なんですが、果たして私はこの方々にときめくだろうか?と不安に思ったんです。それと、その頃私はもう37歳になっていたので、35歳以上という時点で、婚活をしている男性から見て、結婚相手の条件からはかなりの確率ではじかれちゃう。この市場では自分がいいところまで行けなさそうというあきらめもあって、お互いに求めるものが一致しそうなこのアプリを選びました。

――再婚相手探しというより、恋愛したかったということ?

松本 私、20代のかなり若い頃に結婚して専業主婦してたんですけど、33歳で結婚生活に限界が来て、家を飛び出したんです。別居期間中、銀座のクラブでアルバイトを始めたのですが、その頃は離婚後の将来に不安があったので、シングルに戻ったら誰か側にいてほしい、頼りになる存在が欲しい、という欲があり、再婚する未来を求めていました。それは結婚で不安を補おうというよくない考えだったんですね。でもその後イラストレーターとして結構売れ始めて、自分ひとりでも生きていける経済力を身に付けまして、37歳で離婚成立した頃には、すっかり再婚願望がなくなったんです。

――でも男性と出会ったりはしたいのでティンダーを始めたと。

松本 そうですね。デートはしたかったです。人恋しかったし、仕事と違うところで娯楽を見つけたいという気持ちはありました。

――それにしても、マンガを読んで驚くのですが、本当にこんなに次から次へとモデルや役者など、さまざまなイケメンが現れるものでしょうか? 松本さんもかなりお綺麗なので、アプリでもいい男とマッチしやすいのでしょうか?

松本 このアプリって、男性たちは大抵の場合、女性のプロフィールをろくに見ないで、片っ端からとりあえず「ライク」していくんです。お互いが「ライク」するとマッチするので、その中から自分の好みの女性がいるか選別を始めるんですけど、そのときに「ヤリモクはNGです」とプロフィールに書いている女性は、NGの壁を崩して口説き落とすという作業が発生するので、それが面倒でイケメンはメッセージを送らない。私はヤリモクNGとも書かなかったし、こういう人がいいです、という自分の希望も書かなかったので、アクセスしやすかったんだと思います。

――「こういう人と出会いたい」と書くと出会いを狭めちゃうので、いろんな人と会うためにあえて希望を書かなかった?

松本 私は本気のイケメンがよかったんですが、そういう人ってモテすぎちゃって、口説くのも面倒くさいと思ってるんですよ。プロフィールにいい子ぶって「ランチしたいです」とか書いちゃうと、イケメンは「ランチに行かなきゃいけないの?」と思ってアプローチしてこない。

――イケメンはランチすらめんどくさい(衝撃)。

松本 ランチは昼間だし、外で一回食事をしてからっていうのは、モデルの男の子とかその時点でテンションだだ下がりするのを見てわかってたんで。

――冴えない人と真剣なお付き合いをするより、イケメンと深い仲に…ということでしょうか?

松本 ティンダーというアプリはそれに特化してるんだと思ったし、15歳以上年下の男の子と会っている時点で、真剣なお付き合いは生まれないだろうと。

――そうでしょうか? 出会った中には本当に松本さんと付き合いたいと思った男性もいたのではないでしょうか?

松本 好きとか付き合いたいと言われたことはありますけど、それはセックスしたことがない関係だったりして、そのぐらいのことを言わないと一線越えられないって思ったな?って思っちゃう。私の感覚ではちゃんと私を好きでいてくれた人はいなかったんじゃないかな。

――向こうのほうが、松本さんは僕を付き合う対象として見てくれてないな、と思っているのでは?

松本 どうなんでしょうね。それは本人たちに聞いたことがないからわからないですけど…恋愛感情を持つと、お互い突然相手を束縛したくなっちゃったり、すぐ連絡取りたくなっちゃったり、色々と面倒くさくなるので、メンタルを守るためにも信じないようにしていたところはありますね。

――そもそも、セックスする関係だけど付き合ってない、という話もよく聞きますし、今どきの「付き合う」ってどういう定義だとお考えですか?

松本 私はお互いに「付き合ってるよね」「うん」という口約束しかないと思っていて、体の関係があったとしても、その約束がなければ付き合ってないし、その約束があれば、影でお互い別の人とデートしていても、付き合ってるんだと思ってます。

――この作品の中に出てくるイケメンのセリフで、「モテない男はセックスする相手を確保するために彼女を作るけど、僕は勝手にモテるんで女性を捕まえておく必要がないです」というのが衝撃的でした。

松本 (笑)。ちょっとモテすぎて違う次元から言葉を発している男性のことを描くのが、私の作品の特徴なのかも。

――女性としてはやはり、そういうイケメンのほうに惹かれてしまうものでしょうか?

松本 私は結婚をゴールに設定してないから、自由にそういう殿方を好いていられるけど、そのうち誰かと落ち着きたいと思っている女性たちからしたら、そんな男に遊ばれている暇はないぞ、という感じじゃないでしょうか。

イケメンは女性に恋愛感情を持たない?

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