――「ここ数年、電子コミック業界は好景気が続いてましたが、それがコロナで本格的なバブルに突入した印象です」
電子コミック書店の社員がそう語るように、このコロナ禍で電子コミック業界は特需といえる好況の只中にある。なかでも躍進目覚ましいのが、韓国企業カカオの日本法人・カカオジャパンが運営するマンガアプリ「ピッコマ」だ。本稿では電子コミック業界のコロナ特需の概況と、ピッコマ一人勝ちの背景を探る。(取材・文/古澤誠一郎)
LINEマンガを抜き去り圧倒的トップに
スマホでマンガを読む人も増えた今の時代。スマホでマンガを見られるアプリやサービスは複数あるが、その2020年の売り上げで日本市場・世界市場ともに1位を獲得したのがピッコマだ。
中央日報日本語版の2020年9月の報道によると、2020年7-9月期の取引額は前年同期比247%増の約1300億ウォン(約120億円)。なおカカオジャパンが発表したピッコマの年間累計販売金額は、2019年が134億円だったのに対し、2020年が376億円。実に3倍増に近い爆発的な伸びを見せているのだ。
「2021年現在、ピッコマの月商はおそらく45億円程度。売り上げは昨年からさらに伸びています。なおピッコマの躍進以前の電子コミック書店では、LINEマンガがダントツの売り上げを誇っていましたが、それをピッコマが抜き去ったのは2020年の夏。以降はピッコマとLINEマンガの差は開く一方です」(大手出版社の電子コミック編集者)
なおLINEマンガを含めたほかの電子コミック書店も、コロナ特需で成長を遂げたそう。
「最初の緊急事態宣言が出た2020年4月、5月の売り上げは特に凄まじかったですね。電子コミック書店は絶好調でしたし、電子書籍の取次でも前年比で1.5倍程度の売り上げを記録した会社があったそうです。その好調の背景にあるのは、やはり新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛。余暇時間が増えたことで、巣ごもりしながら楽しめるコンテンツとして、電子コミックの需要が伸びたわけです」(電子コミック編集者)
電子コミック書店には、ピッコマのようにスマホアプリで展開するサービスと、ブラウザを主体とするサービスの2タイプがある。前者に含まれるのはピッコマのほかLINEマンガなど。後者の代表例はめちゃコミック(めちゃコミ)、Renta!、コミックシーモア、まんが王国などだ。これらのサービスの好調ぶりは、電子コミック書店のテレビCMがここ最近増えていることからも明らかだろう。
「特に2020年の年末年始は、テレビCMが電子書店だらけの状況でした。CMを放送していたのはピッコマ、めちゃコミ、コミックシーモア、Renta!、dブック、BookLive、ComicFestaなどで、合計で10近くはあったはずです」(電子コミック編集者)