――すべてのビール党に捧ぐ、読むほどに酩酊する個性豊かな紳士録。
場所はJR中央線の高円寺駅と阿佐ケ谷駅のほぼ中間にあたる高架沿い。一昨年に醸造所を拡張して増産体制を整えたばかりだが、まだまだその勢いは止まらない!
夫がカレーを仕込み、妻がビールを仕込む。おしどり夫婦のイメージが強い高円寺の「アンドビール」だが、醸造担当の安藤祐理子さんは「最近は夫婦ゲンカもずいぶん減りました。家庭と仕事が直結しているので、些細なことでいちいち怒っていられないんですよ」と笑う。
元はJR東日本の社宅であったという建物の1階部分にアンドビールがオープンしたのは、2017年のこと。当初はまだ自社製ビールはなく、ゲストビールでタップを埋めるカレー屋としてスタートした。
京都生まれの安藤さんは、就職に合わせて上京し、ソーシャルゲームなどを扱うIT企業に入社。3年勤めたあとにコンサルタント会社に転職するが、その1年後には退職してビールの世界に飛び込んだ。
「東京で初めてマイクロブルワリーという業態を知りました。もともとビールは好きでしたし、いつか飲食店をやってみたい気持ちがあったので、これは人生を懸けて取り組む仕事として面白いかもしれないと、すぐにピンときたんです」
一方でソフトウェア開発に携わっていた夫の耕史さんも、いつかカレー屋をやりたいと夢見ていたことから、夫妻の挑戦が始まった。とはいえ、夫婦そろっての脱サラ開業は一大決心であるはずだが――。