――去る1月上旬、大手芸能事務所を退所し、フリーで活動することが報道された俳優・安藤政信。96年のデビュー作『キッズ・リターン』を皮切りに、数々のドラマや映画でその名を残してきたことが広く知られる名優だ。本稿では退所の理由から民放ドラマへの出演を控えていた期間、そして写真家としても活動する情熱をつまびらかにし、彼が思い描く「映像とクリエイティブ」について語ってもらった。
(写真/永峰拓也)
――およそ3年間在籍した芸能事務所を昨年末で退所されましたが、その理由から教えてください。
安藤政信(以下、安藤) 今はひとりで何かをやり遂げること、自分の考えるクリエイティブとしっかり向き合いたい気持ちが強かったから、かな。僕の場合、俳優だけじゃなく写真家としても発信したい、映画監督としても活動したい気持ちがあったので、どうしてもそこで(事務所と)齟齬や温度差が生まれてしまう。それでもありがたいことに自由に動かせてはもらえたけど、俳優業以外の仕事のスケジュール管理が難しくなってきたこともあって、退所を決めた形です。
――現在フリーとなり、俳優業の依頼の窓口は、安藤さん自身が担っているわけですが、動きやすくはなりましたか?
安藤 風通しはいいです。これは芸能事務所の長所でも短所でもあると思うんだけど、すべての打診やオファーが当事者まで情報が下りてこない不透明さがなくなったからね。すべてを把握できるし、判断も自分でできる。今の時代、俳優や女優も番宣でバラエティ番組に出演することが当たり前になったけど、そうした番組における企画内容やギャラの交渉、進行などもすべて自分が請け負うわけだからね。ありがたいことにフリーになっても仕事の依頼は減っていないんじゃないですかね。それはしっかり誠意を持って仕事に臨んできた証だと思ってます。
――フリーになった途端、まったく仕事がこなくなると「自分の栄光は事務所によって作られていたのか」と、うなだれる場合もあるかと思うんですが、そうはならない自信があったわけですね。
安藤 そうですね。自分は今までクリエイティブはもちろん、プロデューサーや監督、キャスト、すべての人に対して愛と敬意を持ってやってきましたから、仕事をいただけることに自信はありました。ただ、まだ慣れていない仕事を自分でこなしているので、こないだは今後のやりとりをするメールで「担当の窓口」という文面を「銀行の口座」と勘違いして、まだ仕事の内容も決まっていないのに、「こちらが振込先になります」って間違って送信しちゃいましたけどね(笑)。
――現在は映画・ドラマはもちろん、バラエティにも積極的に出演されていますが、2000年から2012年までドラマへの出演はありませんでした。その理由は過去のインタビューで「20代前半はドラマに対して悪い印象しかなかった」と話されている一方で、「過去を書き換えたい後悔もある」とも悔恨していますが、改めて当時の心境を教えてください。