見守りから遊び、おむつ替えまで!――新型コロナで男性育児加速? 育児に特化した「ベビーテック」

――日本でも、女性の地位向上やLGBTQなどへの意識が高まり、それにともなって求められる男性像も変化している。育児においては、いまだにその主体は女性側にある、または女性側に重きが置かれているといわれる中で、それらをデジタル機器やIoTで解決するために「ベイビーテック」にも注目が集まっている。

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 晩婚化・少子化と歩調を合わせ、共働き世帯の増加が着実に進んでいる。厚生労働省の国民生活基礎調査の結果によれば、1980年に1114万世帯だった「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」は、2019年の段階で582万世帯とおよそ半減。反対に「雇用者の共働き世帯」は、614万世帯から1245万世帯へと2倍となった。逆転が顕著になったのは00年。以降、その数はますます広がる傾向にある。

 共働き世帯の増加は、育児を取り巻く状況に影響を及ぼしている。そのうちのひとつが、男性の育児参加を促す流れだ。

「男性は外で仕事、女性は家事と育児」という日本社会に長らく定着してきた性差を前提とした“分業”、もしくはそれを良しとする価値観は、徐々に解体しつつある。社会的には、女性の社会参画、働き方改革、リモートワークなどが推奨され久しく、今年1月には厚生労働省が男性の育児休業取得を促進するための「男性版産休」に関する制度案をまとめるなど、男性の育児を支える新たな制度的な動きも活発化してきた。

 男性の子育てや家事支援、また働き方改革や育休取得促進のための啓蒙など、男性の家庭参加を促すための幅広い活動を展開するNPO法人ファザーリング・ジャパンの代表理事・安藤哲也氏は、「日本社会で父親が育児に参加できる環境がようやく整ってきたのは、ここ7~8年のこと」と、時代の変遷を振り返る。

「20年前を思い返せば、男性用トイレに子どものおむつ交換台もなければ、男性向けの育児情報もなかった。男性が子供を保育園に送り迎えすることはほぼありませんでしたが、今はパパの姿を見かけることが珍しくなくなりました。男性を育児参加へと促す転機としては、リーマンショック、東日本大震災、そして今回のコロナショックが大きかったと思います」(安藤氏)

 リーマンショックが起こった際には、残業もできず、ボーナスも出ないという状況が生まれ、多くの家庭で「働いて稼ぐ=父親」という公式が成り立たなくなった。結果として、男性が家庭に参加する(するしかない)きっかけのひとつになった。当時、ファザーリング・ジャパンが開催していた育児に関するセミナーには、通常時の3倍もの男性が押し寄せたという。

 一方、東日本大震災は人々の価値観や精神に大きな変化をもたらした。死と隣り合わせの経験を社会全体が共有することで、なかには「働くことだけが人生なのか」というような思索をする人々が増えた。

 そして今回のコロナ禍だ。日本社会で働く父親が、これほどまでに家から出なくなった出来事はかつてなかっただろう。あれほど難航していた働き方改革やリモートワークも、コロナ禍をきっかけに一気に動きだした。

「コロナ禍で外出自粛などの影響もあり、多くの夫婦が里帰り出産という日本社会の風習である選択肢を取ることができなくなりました。そのため、4~6月頃には男性の育休取得率が10%増えたという統計があります。一方で、コロナ禍によって家庭関係がよりポジティブになったという家庭が6割、そうじゃない家庭が4割という統計も公表されています。我々は『パパの二極化現象』と呼んでいますが、コロナ禍がもたらした環境変化に適応できている男性、そうでない男性の差が顕著になっています」(安藤氏)

 安藤氏は、共働き世帯の増加や核家族化など、育児を取り巻く社会構造が変化してなお、日本社会には「大黒柱神話」に縛られた男性が少なくないと指摘。環境の変化を受け入れ、積極的に育児に参加することが、男性にとっても楽しみやメリットが大きいとアドバイスする。

「男性が育児に参加することは、家庭にとって非常にポジティブ。乳幼児期の関わりを深めることで、もっとも難しい思春期に子どもの悩みを聞いてあげることもできます。ひいては、家庭内暴力やひきこもりの抑止力になる。パパのみなさんも育児を前向きに楽しんだほうがいいというのが我々の立場です。そのために、今後も啓蒙活動や、働き方改革、育休取得率の向上などを目指して活動を広げていければと考えています」(安藤氏)

 なお、男性の育休取得率(2019年度)は7・48%。育児休業制度は1991年に制度化されたが、男性の取得率はいまだに10%を下回っている。ただし、有給休暇を代用する「隠れ育休」(安藤氏)は実はかなりの数に上るという実情もある。まだまだ欧米と比べると父親の育児参加は足りないと批判されることが多いが、家庭における日本人男性の立ち位置や意識は、統計でみるよりずっと早く変わりつつあるのかもしれない。

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