――まことしやかにささやかれ続けてきた「シャブはサウナで抜ける」という都市伝説。まさか昨今巻き起こっているサウナブームは、そんな側面を持ち合わせているというのだろうか……? 確かに芸能人やスポーツ選手など、疑惑のある人物には“サウナ好き”という印象もちらほら。本誌シャブ抜きサウナ調査班が、その謎に針を刺す!
サウナの醍醐味である「発汗」。覚醒剤常用者がかく汗からは、なんともいえない独特のかおりがするというが……。
昨今における空前のブームが訪れる前から、徹夜作業に追われる人々たちの一種のオアシスとしても機能してきたサウナ。本誌編集部のスタッフとて例外ではない。そして、今号のドラッグ特集を進行するにあたって思い出した、約10年前の出来事――年は50代半ば。体中のあちこちに彫られた刺青。やせ型で遊び人風の男は、サウナの室内で飲み屋の店主のような愛想の良さで話しかけてきた。
「ここ、よく来るの?」
「え、はい。職場が近いので、時々」
「シャブとかやってんの?」
「いえ、シャブは特に」
「最近シャブ抜きでサウナに来る若いのが増えてるんだよね」
「サウナでシャブって抜けるんですか……?」
「いや、それがわからないからさ、もしかしたら兄さんもそうなのかなと思ってね」
いわく、その初老の男性の両親は、都心部で違法賭博を経営していた過去があるらしい。時代にして1970年代、東京五輪後でフィンランドの選手がオリンピック選手村にサウナを持ち込んだことで、日本にもサウナ施設が激増した時期でもある。そんな時代に、違法賭博に足繁く通っていたお客がタバコの煙をくゆらせながら、「さてと、シャブ抜きにサウナに行ってきますかな」と話していたと。また、当時は表に看板を出さずに経営していたサウナ施設も多かったことから、もしかしたら本当にサウナは絶好の“シャブ抜き場”として機能していた事実があるかもしれない。
以後、覚醒剤で逮捕された芸能人やスポーツ選手の「サウナ好き」という側面が週刊誌の記事などで紹介されるたびにちらついてきた「本当にサウナでシャブは抜けるのか?」という疑問――。
その都市伝説を究明すべく、まずは「私の毎日は1時間半の半身浴から始まる」「ポカリスエットを飲みながら徹底的に汗を流す」という記述を残した『シャブ中ヤクザの天国と地獄』(17年/アドレナライズ)の著者であり、元ヤクザで覚醒剤のプッシャー経験もある大矢五郎氏に話を聞いた。