米国で月間1000万人が使っているスマートニュースの「恐るべき現地調査」

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界でさまざまなテクノロジーが生み出され、デジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー『スマートニュース』

2012年12月に誕生したニュースアプリ。共同創業者の鈴木健氏と浜本階生が立ち上げ、主に機械学習のテクノロジーを使って、幅広い分野のニュースコンテンツを配信している。鈴木氏は複雑系を専門とする研究者としての側面もある。2019年秋には日米で2000万人以上の月間ユーザーをほこり、特に米国で急成長を見せている。

「暴動で丸焼けになった、中古車ディーラーのクルマが並んでいます。まるで、ここは戦場です」

 米国のケノーシャ(ウィスコンシン州)。今年8月下旬、黒人男性が白人の警察官に背後から銃で7発を撃たれたことがきっかけで、BLM(ブラック・ライブズ・マター)の抗議運動が起きて、一部が暴徒化した。さらに17歳の白人少年によるライフル銃の乱射事件が発生。合計2名が亡くなり、1人が重傷を負うという惨劇まで起きているエリアだ。日本人の観光客はおろか、一般的な米国人ですら近づきたくない――。2020年10月末、そんな街に入り込んで視察をしていたのは、多くの日本人が知ってるであろう、ニュースアプリ「スマートニュース」の創業者、鈴木健氏だ。

 まだ生々しい傷痕が残る街を歩き回り、事件当時のことを近隣の人々に教えてもらい、地元のコミュニティに入ってゆく。そして時間があれば、まるでジャーナリストのように、SNS上で動画による現場中継もする。

「この街は、まさに分断している米国社会を象徴している場所に感じますね」

 筆者と電話でやりとりしていた鈴木氏によれば、このままトランプ大統領の是非を問うことになる選挙当日(11月3日)も滞在し続けて、米国で暮らす3.5億人のリアルライフを見て回るという。多くの人は、なぜスマートニュースの創業者が、コロナの感染拡大も収まっていない米国をウロウロしているのかと、訝しく思うに違いない。またスタートアップとはいえ、今では国内外に350人の従業員を抱え、時価総額は1200億円を超える、日本を代表するユニコーン企業のひとつでもある。その創業者CEOである鈴木氏が、そんな調査旅行を繰り返すとなれば、一般的なビジネスパーソンの感覚では正気に思えないだろう。

 しかし、スマートニュースは米国市場で1000万人の月間ユーザーを抱える、日本発のスタートアップに化けているのだ。とりわけ20年に入ってから、2倍以上の急成長を見せている急成長アプリでもある。フェイスブックを1億人以上が使っている米国において、国民的アプリとはいえないが、それでもニュースアプリとしてはトップレベルの地位を築きつつある。これは日本のユーザーには、ほとんど知られていない事実だ。そして鈴木氏の米国での調査旅行と、米国市場でのアプリの急成長が、一本の線でつながっている事実はもっと知られていない。

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