――昨年2月にリリースしたアルバム『THE ANTHEM』リリース時に語っていた“武道館2デイズ”を成功させ、向かうところ敵なしのAK-69。前作より約1年半ぶりとなる新作『LIVE:live』では、このコロナ禍におけるエンターテイナーとしての責務と使命を果たせたと話す。日本のヒップホップ・シーンを背負う王者が描くライブ/リブが照らし出した道とは――。
(写真/ティム・ギャロ)
――新作のタイトルを『LIVE:live』とした理由を教えていただけますか?
AK-69 もともと2月にツアーが終わって、その後に制作期間としてのスケジュールを取っていたんですけど、コロナ禍と重なってしまって。その間、本質がないものはどんどん淘汰されていくのを目の当たりにし、「俺の本質はなんだろう?」と考えたときに、それはやっぱり「ライブ(LIVE)だ」ということと、人生を紡いで歌を作ってきたメッセージを伝えてきたことだと思ったんです。それで同じ綴りのライブとリブ(live)という言葉をタイトルにしようと決めたんです。2つとも俺がずっとやってきたことだし、自分が今やるべきことはこれだなと思って。
――コロナ禍の影響で、いつもと違う制作環境を強いられたことは?
AK-69 プライベートスタジオを使い、そこにプロデューサーとこもって制作していたので、特に変わらずですね。強いて言えば、いつもアルバムを作るときは北海道のスタジオに行ってるんで、そこに行けなかったくらいかな。
――新型コロナの影響で、アーティストもこれまでと同じマインドで活動するのは難しいのかなと思うのですが。
AK-69 こんなときだからこそ悲観的になることばっかりじゃないなと思っていて。自分の場合は、逆にいろんなことが見えましたよ。音楽然り、お笑いやスポーツ然り、これまでいかに日常的にエンタメから力をもらっていたかということにも気づかされた。大袈裟かもしれないけど、オリンピックすら延期になって、エンターテイナーとしての責務というか、使命を改めて感じたんですよ。そういう意味ではよかったなと思える部分もありますね。
――昨年は武道館2デイズ公演も達成され、活動の核には常にライブがあると思いますが、それもままならない現状に対してはどう感じていますか?
AK-69 コロナ収束後のリアルなライブのステージに関しては、すでに構想はあります。その前にアルバムリリースとともに名古屋城を舞台に配信ライブをする予定もある。武道館2デイズも今回の配信ライブも、今までキャリアの節目になるライブというのは、全部捨て身なんですよ。「AK-69=ライブ」というイメージも、単純に俺がライブが好きだからって理由だけじゃなく、裏では命がけで挑んでいる、普通の会社じゃ絶対にGOしない内容でやっている自負もあるんです。(自分の事務所である)Flying Bとしては、大きいライブは赤字も覚悟するけど、さすがにそればかりだといけないので、小さいライブでしっかりと収益を上げる。本当は新作を引っ提げて9月から47都道府県をまわるツアーだったんですけど、飛んじゃいましたからね。正直、アーティストにとって大きな収益を生むライブが延期、中止になるのは厳しいですよ。でも、だからといってこんな状況だから愚痴をたれるとか、ぬるっと配信ライブするっていうのもエンターテイナーとして許せなくて。
――となると、名古屋城での配信ライブはどんな内容になりそうですか?
AK-69 あくまで生のライブの代わりではなく、パッと見て「とんでもねえ」って思うようなライブですね。名古屋城の許可を取るのも二転三転して、マジで大変だったんですよ。演出に関してもいろんな規制があったんですけど、あらゆる政治力を駆使し、周囲の関係者に協力してもらってなんとか。名古屋城史上ではなく、全国の城史上一番、城がかっこよく使われた例になるはずです。どの演出家やプロジェクションマッピングの企画よりも、抜群に革命的なライブになったと思いますよ。
――崖っぷちの状態でも常に自分のハードルを超えていくという闘志は、どう保ち続けているのでしょうか?
AK-69 実際、火が消えかけるときもあるけど、やっぱり目標をリアルに持ち続けることに限る。前回のツアーで「次はドームだ!」と目標を掲げたんですよ。「がんばってください」と言いながら心の中では「無理だろ」と笑ってる人もたくさんいる。ずっと一緒にやってきているライブ制作会社からは、「さすがにそれは無理なので、うちは降ります」って言われたくらいですから(笑)。でも、「これまで人前で言ったことはやってのける」って言い続けてきたから、口にした以上は実現させなきゃいけない――それが原動力につながっている。自分を追い込むことによって力を発揮するんだなということを、改めて感じています。