――特定のキーワードをクリッピングする業務を主とする内外切抜通信社。本来であれば「東京オリンピック」の開催で、連日激務となる可能性が高かった同社だが、新型コロナウイルスの出現で業務は激変。しかも、“新型コロナウイルス”はクリッピングの対象にならない……!? そしてこんな時期だからこそ見えた紙媒体の“意義”とは――。
「例年と比べて売り上げは落ちたが、ボーナスをなくしてしまったら社員のモチベーションが下がるので、役員賞与をカットしてボーナスは支給した」と男気を見せた近藤社長。「サイゾーの感染文学特集、面白かったよ」とありがたい一言も。https://www.naigaipc.co.jp
本誌2018年3月号の雑誌特集にて「池上彰も紹介する情報プロ集団」として登場した「内外切抜通信社」(以下、内外切抜)。さまざまな企業の広報担当やPR会社などからの依頼によって、新聞や雑誌、ウェブ媒体などからクライアントが必要とするワードやテーマが掲載された記事をクリッピング(=切り抜く)するサービスが彼らのメイン業務。いわば情報メディア全般を扱うプロフェッショナルである。そんな同社の視点から、今回の新型コロナウイルスが日々の業務や彼らのクライアント、さらに出版業界へどのような影響を与えたのか、話を聞いてみた。
まずは内外切抜が日々行っている業務の中で、コロナ関連の記事がクリッピングされるようになった時期に関して、営業統括部長兼クロスメディア戦略部部長の小山晋一氏から。
「体感では5~6月ぐらいでしょうか。需要としては製薬会社の情報や、各企業がどのような対策を行っているかのプレスリリースなどの情報収集が多かったように思います」
また、「動画配信サービスや学校教育関連の企業が出したプレスリリースのクリッピングも増加した」と小山氏は続ける。ただし、それらは自社名などをキーワードとした通常業務の範囲のもので、例えば「Go To トラベルキャンペーン」などのようなコロナに直接関連したキーワードでの調査依頼が増えたわけではないという。制作部部長の牛崎岳人氏が話す。
「例えば、コロナによってイベントが中止となり、それに関連したクリッピングの依頼は多いのですが、具体的に『この記事をクリッピングしてほしい』という依頼は少ない。これはすべての人にいえることだと思うのですが、いったい新型コロナウイルスがどういうもので、いつ収束するのかもまったく未知な状況で、依頼する側としても情報収集しづらいのかもしれません」(牛崎氏)
さらに、コロナの影響でクリッピングを依頼する各企業の業績が落ちるということも相まってか、内外切抜とのクリッピング契約を打ち切る企業もあれば、全体的な受注量も減少。内外切抜の売り上げ自体も同様に減少したという。同社の代表取締役である近藤義昭氏に現状を聞く。