【ralph】「グライムとかドリルとかマジでどうでもいい」黒いバンダナの最注目ラッパー

――2010年代は“トラップ”なるヒップホップのスタイルが世界的潮流となったが、今は“ドリル”がキテる。日本でその先鞭をつけたように見える男は、何をたくらむのか?

(写真/西村満)

 レゲエ、ドラムンベース、ハウスをミックスした、グライムと呼ばれるUK産ヒップホップ。2000年代に誕生し、性急なラップとビートを特徴とするそれは、日本では長らくマイナーな音楽だったが、今、ralphというラッパーの登場で注目を集めている。彼は19年3月に「No flex man」という曲でシーンに突如現れ、同年9月にEP『REASON』を発表。以後もコンスタントに曲を出し、この6月には新たなEP『BLACK BANDANA』をリリースした。本作では、2010年代に米シカゴで生まれ、UKに飛び火してグライムとも混ざり、さらに近年は米ブルックリンに逆輸入されて活況を呈す、ドリルというヒップホップ・サウンドも取り入れているように聴こえる。

「自分としては全然意識してないです。最近よく『日本にドリルを持ち込んだ』とか『グライムのラッパー』と言われるけど、そんなのはマジでどうでもよくて。俺はいつも、自分がカッコいいと思う音楽をやってきただけ。今はスピード感のあるラップだけど、Double Clapperz(グライムを軸としたプロデューサー・ユニット)と出会うまではBPM90とかの曲もあったし。でも、どうせなら人に合わせたりするんじゃなくて、自分が好きなスタイルで勝ち上がりたい。絶対に勝てない相手を前に『もうやるしかない』という場面でこそ、本気が出せるから」

 横浜で生まれ、各地を転々とした後、今再び横浜を拠点とするralph。過去はつまびらかにしないが、低所得者層が住む団地での過酷な生い立ちを歌ったANARCHYのMV「Fate」(08年)を見て、我がことのように感じたという。

「12歳くらいで『Fate』を聴いて、自分の中でモヤモヤしてたものが言語化されたんですよね。自分と近い境遇が“ゲトー”と表現されていたり、『真っ暗な家に慣れた小2』というリリックはその頃の俺にとってリアルだったし」

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