――裏社会のドラッグ、バイオレンス、セックスをラップしてきた漢 a.k.a. GAMI。本誌に幾度も登場し、近年は地上波のテレビ番組に出演して人気を集めていたが、5月初頭、大麻所持の容疑で逮捕された。保釈後、自伝『ヒップホップ・ドリーム』(河出文庫)を構成した音楽ライターの二木信氏が、事件の真相を探るべく本人を直撃!
(写真/細倉真弓)
東京都新宿区の戸塚警察署にある留置場の面会室の重い扉を開くと、席に着くのも待たず、漢 a.k.a. GAMIは「あれ? 俺、金の匂いがしましたか?」とすかさず軽いジョークを飛ばしてきた。彼の後方にいる留置担当官も堪え切れず、笑顔を見せる。
5月2日、音楽レーベル〈鎖グループ〉の代表であるラッパーの漢 a.k.a. GAMIが、新宿区大久保にある自身のレーベル事務所の目の前の通りで、大麻所持の容疑で現行犯逮捕された。その10日後、覚醒剤の陽性反応が出たと報道されると、さらなる大きな衝撃がこの国のヒップホップ・シーンを揺り動かした。
面会室でジョークを飛ばしていた漢は、しかし、レーベルの社長であり、地上波のテレビ番組にも出演していた影響力の大きい人気ラッパーである自身の逮捕を重く受け止め、保釈後の6月初旬にレーベルのYouTubeチャンネルに謝罪動画をアップ。そして、同月下旬にはラッパーとしての再出発を宣言する最新曲「Start Over Again」を発表した。
インターネットなどでは漢の逮捕や謝罪動画をめぐるさまざまな見解や臆測が飛び交っているものの、この間、当事者が経験した逮捕の経緯や留置場での出来事、その過程で考えたことについてはほぼ報じられていない。漢は今、何を思うのか? 7月6日には梅雨空の中、東京地方裁判所で初公判が開かれたが、その少し前に再会した彼は次のように語った。