――コロナ禍の中、よく聞かれるようになったニューノーマルという言葉は、危機的な状況後に起こる構造的な変化のことを表している。世界の常識をアップデートする今回のコロナは、極道の世界にも大きな影響を与えたようで……。
(写真/渡部幸和)
新型コロナウイルスの影響で、2020年の世界経済は、戦後最悪のマイナス成長に――。世界銀行が6月8日に出した予測では、今年の世界経済の成長率はマイナス5・2%。それさえも、新型コロナの影響が20年後半に落ち着くことが前提の数字で、第2波や新興国の感染拡大によっては、マイナス8%まで急落することもあり得るという。
アメリカの失業率はこれまでの4%前後から、4月には14・7%に急増し、5月も13・3%で推移。日本でも有効求人倍率や失業率は悪化し続けている。感染者数は世界で1000万人、死亡者数は50万人を突破し、世界はいまだコロナ禍の真っただ中にある。
コロナが私たちの生活に与えた影響は、マスク着用やオリンピックの延期だけではない。これまで対面で行っていた場面でもZoomによるリモートでのやりとりが当たり前になったように、生活様式そのものが、大きな構造的な変化を迎えることになった。そんな中で囁かれているのが、「コロナ後のニューノーマル」というキーワードである。
ニューノーマルとは、「新たな常態」と訳されることもある表現で、経済的・金融的な危機の後に生じた構造的な変化を指し示す言葉として使われてきた。
もともとは、ITバブルや同時多発テロ後の00年代前半のアメリカの状況を指して使われ出したものだが、08年のリーマンショックを経て、債券運用大手のピムコ(PIMCO)共同CEOのモハメド・エラリアンが09年に提唱したことから広く使われるようになった。ニューノーマルと呼ばれる危機後の世界の特徴としては、経済の水準の低下、先進国から新興国へのパワーシフト、金融面への規制の強化などが挙げられていた。