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●移動通信トラヒックの推移
(出典)2019年総務省「第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望」より
――新型コロナウイルス災禍の中で始まった、日本の5Gサービス。自動運転やスマートシティなどのイノベーションを加速するインフラとして期待されつつも、その船出には期待外れとの非難だけでなく、コロナ等々多くの壁が立ちはだかっている。政府の非常事態宣言によって日本中が自粛による打撃を受ける中、高収益を維持している通信会社には、コロナ以後の日本の成長を支えることへの期待も大きい。5Gの明日はどっちだ。
クロサカ 3月下旬にドコモ、KDDI、ソフトバンクの3大キャリアが5Gサービスを開始しました。韓国など海外では昨年から商業サービスをスタートしているところがありましたが、ようやく日本でも5Gが使えるようになりました。ところが、その直後に新型コロナウイルスのため政府が非常事態宣言を発令。日本中に大きな影響が出ています。そうした中で船出した5Gの普及と、通信業界の今後について、石川温さんと議論したいと思います。ちなみに今回の対談は、ウェブ会議で行っています。
石川 4月以降は情報収集が基本的にウェブ会議に代わっていて、チームスとかハングアウト【1】で対面取材をしています。企業などの記者会見もウェブですし、移動の時間がなくなって、かえって効率が上がったかもしれません。
クロサカ 仕事の打ち合せは基本的にウェブ会議になっていますよね。ただ効率がよいので、1日に連続で6件とか8件とかできてしまうのは考えものです(笑)。
石川 企業からの情報発信も減っているので、仕事のネタは若干少なくなっています。ただ、ウェブ媒体の編集長に聞くと、PV自体は伸びていて追い風だけど、やはりネタが減っているのが悩ましいところだそうです。
クロサカ 非常事態宣言から1カ月近くたって、ウェブ会議以外でもリモートワークに皆が慣れてきましたよね。そんなコロナ真っただ中に船出した日本の5Gですが、石川さんはどんな印象をお持ちですか。
石川 正直に言って期待外れな面が大きいです。各社の5G対応スマホを買ってチェックしましたが、とにかく5Gの電波が吹いていない。ドコモやソフトバンクは大きなキャリアショップの前、KDDIは西新宿のKDDIビルの裏に行かないと5Gの電波をつかまない状況です。4Gのサービス開始の頃は、もう少し電波が吹いていましたから、それと比べても期待外れです。各社から5Gスマホが発売されましたが、販売店の営業時間短縮のためスマホ全体の売れ行きが落ちていて、盛り上がっているのは4GのiPhone SEのみ。
クロサカ なるほど。外出自粛だから5Gの話題が少ないだけじゃなくて、実際に使えるエリアがかなり限られているんですね。
石川 ただ、5Gのキラーアプリ、キラーサービスはなんだろうと、これまでモヤモヤしていて、クロサカさんも本で書かれていたように、なかなか一般の人には理解しにくかった。それが、コロナで家から出られなくなって、ビデオ会議を使って、仕事をするだけでなくネットで友達や家族と会うという行動はコロナが収束に向かってからも定着していくと思う。となると、5G時代のキラーサービス・アプリはビデオ会議のようなものになると思っています。