タワマンに集うリアル・ストーナーたち――尋常じゃない“煙”でぶっ飛ぶ! ジャパニーズマゲニーズの信念

――今、関西でもっとも“煙たい”ラッパーといえば、孫GONGとJAGGLAによるユニット、ジャパニーズマゲニーズというユニットだ。2人が取材場所として指定した大阪中心部にあるタワーマンションの一室を訪れると、そこは大勢の仲間たちと“煙”で満たされていのだった――。

左より孫GONG、JAGGLA。共にラッパーとしてのキャリアは長く、2人によるジャパニーズマゲニーズの人気は急上昇中。
孫GONGの腹には、大きなダルマの刺青が豪快に彫られている。

 2019年6月5日にYouTubeにアップされた、とんでもないミュージック・ビデオ(MV)がある。それは大きなバズを引き起こし、20年4月初旬で再生回数130万回を超えている。日本のラップ・ミュージックのMVで再生回数100万回を超えること自体、今や珍しくはない。だが、京都府山科区を拠点とする孫GONGと、大阪府高槻市をフッド(地元)とするJAGGLAという2人のラッパーによるユニット、ジャパニーズマゲニーズのMV「REAL STONER」は極めて特異である。尋常じゃない量の“煙”でぶっ飛ぶ開放的なパーティの様子をとらえているのだ。

 コメント欄には、「まるで日本が合法かのような吸いっぷりw」「本当に楽しそう」などの肯定的なコメントも並ぶ。レゲエ・シンガーのPERSIAと、WILYWNKAらとの変態紳士クラブでも活動するレゲエ・ディージェイのVIGORMANによるメロウなヴォーカルが加わり、日本国内におけるその反社会性を殊更に強調するのではなく、その開放感を自然体で伝えている。邪気がなく、なんだかとても楽しそうなのである。

 しかし、昨年3月に「REAL STONER」を含む“ぶっ飛び”チューンだけで構成した1stアルバム『TRIP MASTER』を発表したジャパニーズマゲニーズには、そのひょうきんさとは裏腹に固い信念や理想があるようだ。音楽史をひもとけば、ジャマイカのレゲエ・ミュージシャン、ピーター・トッシュの「リガライズ・イット」(1975年)、国内ではザ・タイマーズ(忌野清志郎がゼリー名義でヴォーカルを務めたバンド)の「タイマーズのテーマ」(89年)、ダブ・レゲエ・バンド、オーディオ・アクティヴの各楽曲など多くの“先例”がある。彼らが発した大麻をめぐる問題提起や大麻解放の主張と、ジャパニーズマゲニーズの態度は、大局的に見れば同じ方向性にあるのではないか――。

 そうしたことを考えながら、人気が急上昇している2人のラッパーに話を聞くために大阪に向かった。指定された取材場所は、心斎橋からほど近くにあるタワーマンション。そびえ立つ38階建ての高層ビルの正面玄関前に、夜の暗闇でも十分目立ついでたちの男たちが次々に現れる。2人のほか、孫GONGの京都の仲間からなるヒップホップ・クルーのD.C.A、JAGGLAが率いる高槻のクルーの竜巻一家(別名・TORNADO)、香川県高松市のグループであるSTONE CRONICのメンバー、大阪発ファッション・ブランドのJOE MONTANAのデザイナーなども集結している。

 彼らとエレベーターで34階まで上がり、ある部屋に入ると、そこで迎えてくれたのは「REAL STONER」のMVにも登場する神戸市長田区出身のラッパー、阿修羅MIC。そして、総勢20名ほどの男たちでごった返す一室は、MVさながらの様相を呈すことに。孫GONGは「REAL STONER」で「部屋が白くなる」「深く肺で吸収/ツレと回す10周」と歌ったが、嘘偽りのないリリックであることがわかった。そんなリアル・ストーナーたちの宴がひと段落したところで、インタビューは始まった。

注射器で打ってからステージに上がった

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