――子どもたちが登場し、おもちゃやゲームを紹介する、キッズYouTuberチャンネルが人気を博している。さまざまなチャンネルが乱立し、活況を呈しているが、子どもの動画を世界に公開してお金を稼ぐ手法に問題はないのだろうか?
今や幼少期の子どもすらスマホを使う時代に。(写真/Getty Images)
終わりの見えない新型コロナウイルスパニックにより、今世界中の子どもたちが引きこもり生活を強いられている。学校に行けない子どもは今何をしているのか? 持てあました時間の多くが、YouTube視聴に費やされていることは確実だろう。
そんなYouTubeの世界で活躍する子どもたち。それが本記事で扱うキッズYouTuberだ。就学前から小学生程度の子どもが登場し、おもちゃを紹介したり、ゲームをしたりする動画が配信されるチャンネルの中には、年間28億円を稼ぐスーパースターもいるという。ITジャーナリストの三上洋氏が解説する。
「YouTubeの世界では、子ども向けの動画はそうでない動画の3倍は視聴回数が多くなる、とも言われています。HIKAKINだってメインの視聴ターゲットは子どもであるように、YouTube自体がかなり子どものための文化となっているのが今の状況です。人気YouTuberランキングの上位にも、子どもがメインで出演するキッズYouTuberチャンネルがかなりの数を占めています。日本は、姉と弟がおもちゃで遊んだりする『キッズライン』や『ベイビーチャンネル』など、さまざまなチャンネルが人気で、不登校YouTuberとして話題のゆたぼんは良くも悪くも目立っています。視聴者としては、人気のキッズYouTuberを毎日見ていると、性格や好きなものなどなんでもわかってくるので親近感が湧いて、その子の成長を見守っている感じになったり、子どもなら一緒に育っているように思える。演技力というよりは、素のキャラクターで人気になるのが、キッズYouTuberの特徴ですね」
今どきの子どもたちにとっては、主要な情報源はテレビなどではなく、こういったキッズYouTuberのチャンネルだ。親にプレゼントをねだるときにも、これらのチャンネルで使い心地を調べて、グッときたものをチョイスするのが当たり前になっている。
兵庫県立大学准教授で、子どもとネットの問題に詳しい竹内和雄氏も、こう話す。
「昨年日本ユニセフ協会が開催した、ユニセフ・スマホサミットで発表されたデータでも、子どもたちが最も時間を使うのは、ネット、中でも動画視聴であることは明らかになっています。今どきの子どもや中高生に話を聞くと、テレビは見たいときから見始められない、つけると途中からになってしまうため、彼らの生活スタイルに合わないというのですね。勉強とかゲームが一段落ついたときにサッと見始められるYouTubeこそ、彼らにピッタリなメディアなんです。中でもキッズYouTuberがおもちゃを紹介しているような動画は、出てくる子どもと同世代の子どもにとっては、自分の趣味嗜好を導いてくれるような存在なのですね」
そうしたYouTubeの中でも、子どもたちのハートを捕らえているのがキッズYouTuberチャンネルというわけで、その世界的な状況を前出の三上氏が解説する。
「世界的にもこういったキッズYouTuberは人気で、アメリカの経済誌『フォーブス』が2019年に発表したYouTuber長者番付ランキングでは、1位がアメリカテキサス州在住で、父親が日本人、母親がベトナム人の、ライアン・カジという8歳の男の子。およそ28億5000万円もの年収を稼いでいるそうです。3位もキッズYouTuberで、アナスタシアという5歳の女の子。この子はロシア在住だったのですが、YouTuberとして成功したことで、家族でアメリカに移住しました。年収はおよそ20億円にも達しているそうです」
幼い子どもがかわいらしく登場することがこれらのチャンネルの人気の秘密だが、当然ながら、子どもが自分だけで撮影・編集して動画を上げられるはずもない。実質的には親たちがプロデューサー兼演出家となって、撮影・編集をこなしていることは、言うまでもないだろう。三上氏は、「キッズYouTuberの運営のよくあるパターンとしては、父親が撮影・編集・ディレクター。母親がおもちゃをメーカーに借りにいったり、YouTuber事務所と交渉するなどの渉外担当でありプロデューサーという分業体制になっていることが多いですね。毎日アップするとなるとかなりの時間がかかるので、キッズYouTuberチャンネルの運営が家族の本業になっているケースも多いと思います」と話す。
三上氏が続ける。
「そもそもYouTubeでは13歳未満だと動画をアップロードすることはできません。実質的には、キッズYouTuberは親のアカウントで運営しているはずで、その時点で、子どもが主役のチャンネルというのは、YouTubeの年齢制限の決まりからは矛盾した存在であるということができるでしょう」
この点に関して、YouTubeを運営しているグーグルでは次のように規定している。
「YouTubeを利用するには、13歳以上である必要があります。13歳未満のお子様に対しては、安心してYouTubeの動画を視聴していただけるよう、YouTube Kidsを提供しています」
YouTube Kidsは、アメリカでは15年、日本では17年に開始されたサービスで、大きなアイコンとわかりやすいデザインで、子どもでも簡単に操作ができるようになっている。ホーム画面には「アニメ・ドラマ」「おんがく」「まなぶ」「はっけん」の4つのカテゴリがあり、タイマー機能や検索設定によって、親が子どもの動画視聴を制限できるというのだが……。
「実際には、13歳未満どころか、小学校に入る前から、親のパソコン、スマホ、タブレットなどでYouTubeを視聴し始める子どもがほとんど。お子様向けのコンテンツしかないYouTube Kidsでは、子どもだって物足りなくて満足できないでしょうね」と、三上氏も話す。