すべての初期衝動を映像に落とし込む――『WALKING MAN』でANARCHYが望んだ描写

――ANARCHYがメガホンを執ったことで話題となった映画『WALKING MAN』。彼が映画で表現したかったこと、描写したかったこととはなんだったのか? ラッパーとして成功を収め、そして映画監督としての才を見せた男は、次作への構想も話してくれた。

(写真/cherry chill will)

 注目の若手俳優・野村周平が、どん底の生活からラッパーとしての成功を目指す主人公〈アトム〉役を演じる、映画『WALKING MAN』。昨年10月に劇場公開がスタートしたこの作品で監督を務めたのが、日本のヒップホップシーンのトップに立つラッパーのひとりであるANARCHYだ。これまでラッパーが役者として映画に関わってきたケースは多数あるが、現役のラッパーが自ら監督としてヒップホップをテーマにした映画を撮るというのは、実は世界的にも非常に稀だ。日本ではまだまだ発展途上といえる、この“ヒップホップ映画”というジャンルであるが、『WALKING MAN』で監督デビューを飾ったANARCHYの言葉から、そのリアルな現状と未来を探ってみた。

――今までいろんなヒップホップ映画を観てきたと思いますが、物足りなかったり、「これは違うな」みたいに感じることはありましたか?

ANARCHY アメリカの映画でそんなふうに感じたことはなかったですね。やっぱり向こうで生まれたカルチャーだし、忠実にヒップホップを再現してないと文句言われると思うんで。ただ、日本の作品に関してはカルチャーをわかってない、理解していない人が作ることが多かったりする。ストーリーは面白くてもラップの部分はかっこよくなかったりとかね。「ヒップホップという文化を世の中に伝える」という面では機能するかもしれないけど、誰が観てもバイブルになるような作品は日本にはなかったと思う。そういう意味で『WALKING MAN』は、若い子がラップに興味を持つくらいのバイブルになる映画にはなったと思ってます。

――『WALKING MAN』を撮る上で、そういったリアリティの部分に関してはどう考えましたか?

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