純度の高いハードバイオレンスの隆盛――幽霊、闘争で情念を語る少年マンガ。

――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

『過狩り狩り』収録。今回もマンガ話だけど、世にも見苦しいサブカル泥仕合と映画秘宝休刊について語ったほうが良かったか?

 アニメ版主題歌の『紅蓮華』はNHK紅白歌合戦でも歌われ、この年末年始も『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴)は爆発的に売れていた。人気マンガではあったが、アニメ化以前は正直、傍流の作品で、綺麗な『彼岸島』(松本光司)扱いだったから、18巻目で20年以上少年マンガの頂点に君臨してきた『ONE PIECE』(尾田栄一郎)を脅かすほどの大ブレイクは意外なのだが、原作マンガの表現技術が微妙に洗練されていないがゆえのとっつきにくさを、馬鹿丁寧に作られたアニメ版が補完したことで、爆発のピースが揃ったのだろう。

 本誌前号の特集でも触れられていたが、『鬼滅の刃』は容赦ない人体破壊のカタルシスと情念が絡み合って織りなされる一大残酷絵巻だ。基本は大正時代を舞台とした伝奇剣劇だが、物語の骨格が『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦)第一部と合致しているのは、本来、少年マンガには不適格な作者の異能を抑え込むための判断なのだろう。なにせ原型である読み切り『過狩り狩り』では、炭治郎の役回りのキャラクターが情け無用のキリングマシーンで、感情移入もへったくれもないのだ。加えて、週刊少年ジャンプは冨樫義博の影響が強い『呪術廻戦』(芥見下々)と『チェンソーマン』(藤本タツキ)も台頭し、ハードバイオレンス三本柱を構築しつつある。『NARUTO』(岸本斉史)の流れで健全明朗な『サムライ8 八丸伝』(岸本斉史・大久保彰)を中心に据えようとしたら、こういう「予定外」が起きてしまうのだから、マンガ雑誌というものは面白い。

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2024.11.22 UP DATE

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