「三国志」に「キングダム」、「らんま1/2」も!「~アルヨ」は蔑視の象徴? マンガで描かれた中国印象変遷史

――中国大陸と日本カルチャーは切っても切れない存在。マンガでも、三国志など歴史の一部として人気を博し、00年代に入ってからは、経済的、科学軍事的な驚異の対象として描かれつつある。交流も深くさまざまな文化を共に育んできた彼の国を日本のマンガはどう描いてきたのだろうか?

「気分はもう戦争」(双葉社)は最初、中ソの国境で戦争が勃発したという話。今年アクション50周年記念で描かれた「3」では、中国と北朝鮮の国境付近が描かれていた。

 00年代以降の経済成長によって、世界第2位の経済大国にのし上がった中国。共産党一党独裁による非民主的な政権であるとはいえ、アリババやテンセントをはじめとした企業の躍進著しい中国を「発展途上国」という目で見る日本人は、さすがに少なくなっているだろう。

 これまで、日本においても数多くのマンガで中国が描れてきたが、同国の国際的な位置づけが変わる中、その描き方にも変化が見られる。本稿では、そんな「マンガに描かれた中国」の変遷を追っていこう。

三国志で知る思想的背景、SFで知る経済的成長

「中国を描いたマンガ」として日本人にお馴染みなのが、『三国志』【1】『水滸伝』『項羽と劉邦』(以上、潮出版社)を描いた横山光輝作品や、横山と同じく三国志演義をモチーフとした『蒼天航路』(講談社)そして戦国時代を舞台とした『墨攻』(小学館)や殷の王朝時代を舞台にした『封神演義』(集英社)といった古代中国を描いた作品だ。なかでも、06年に連載が開始され、19年に実写版が公開されたマンガ『キングダム』【2】は、累計4700万部の部数を記録し、関連本が相次いで出版されるなどマンガの枠を超える人気となっている。これまで「暴君」のイメージが強かった始皇帝の側から古代中国を描いたこの作品について、『始皇帝 中華統一の思想『キングダム』で解く中国大陸の謎』(集英社新書)の著書もある早稲田大学文学学術院の渡邉義浩教授は次のように語る。

「近年、日本では中国の成長に対する答えが求められています。キングダムが人気になった背景には、専制的な政治の中でも、経済を発展させていく中国の淵源を始皇帝の政治に求める傾向があるのではないでしょうか。

 例えば、中国には『中央集権的な官僚制度で国家が維持されなければならない』という『大一統』という考え方があり、これは始皇帝の時代から定まったもの。現代のチベット問題やウイグル問題、さらには今クローズアップされている香港問題などに関しても、中国政府の基本方針である大一統を理解することで、その行動原理をつかむことができるんです」

『宗像教授』シリーズなどで知られる星野之宣も、18年から連載する『海帝』【3】において、明朝時代を舞台に、西洋の大航海時代よりもはるか昔に大航海に乗り出した男・鄭和を通じて、知られざる中国の姿を描いている。今や、歴史ロマンを描く中国古典マンガの中にも、「大国」としての姿が反映されているようだ。

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