――今なお現役でレディコミ界のトップに君臨するマンガ家・井出智香恵氏。ここでは井出先生が推す人間関係泥沼マンガを自薦してもらいつつ、戦友である榎本由美/森園みるく両先生にも参戦いただき、レディコミ界を代表するクイーンたちにも、恐るべき泥沼マンガを選んでもらった。
(写真/西木義和)
2年ぶりに本誌のマンガ特集に登場するのは、泣く子も黙るレディコミ界の女帝・井出智香恵先生。再び先生のオフィスのある京都まで足を運び、取材を始めるやいなや、「ねえ、教育によくないとかの理由でマンガを読ませない親御さんや、自らマンガを読まない子が多いらしいんだけど、どう思われる? マンガから得られる知識はたくさんあるのにねえ」と、眉間にちょっとばかりのしわを寄せながら語った井出先生。「でも、こないだ若い弁護士の先生から、無駄な会議が多いので、会議中に井出先生の『女監察医』(ぶんか社)を読んでいます、って言われてね、うふふ」と、はにかんだところで、今回の趣旨である「人間関係が泥沼の様相を呈すマンガ」について話を聞くことにした。
また、井出先生が普段から懇意にしているというマンガ家・榎本由美先生と森園みるく先生にも協力いただき、あらゆる人間関係の確執に焦点を当てたマンガを紹介していきたい。
――そもそも今回のテーマである「泥沼の人間関係」と聞いて、井出先生が真っ先に思い浮かぶことはなんですか?
井出智香恵(以下、井出) それはもう「嫉妬と金」でしょう。おたくの読者さんは男性が多いから、「嫉妬といえば女性」と思われてるかもしれないけど、いいえ違います。嫉妬心は男性のほうが強いの。確かに嫉妬心の強い女性もいるけど、たいていが恋愛における嫉妬でしょう。男性は表に出さないようにしているだけで、プライドを傷つけられたり、自分より下に見ていた人間が出世したり、仕事における嫉妬心は非常に強いの。最近では働き盛りでうつ病を発症する男性も増えてきてるって聞きますからね。あなたも気をつけなさい。
それと女性の恋愛の嫉妬に付きものなのは「美醜」。美人は食事をごちそうしてもらったり、仕事で過ちを犯しても許される境遇にある。それに対し、醜ければ虐げられて損をしているような境遇に陥る。ここで大事なのは、「醜い人は心はきれい」という誤解。榎本先生が『ブスで処女な6人の女たち』(※別項参照)というマンガを描いているんですけど、「勘違いブス」や「つきまとうブス」、「こじらせブス」の話を読んだら「美しくない女性が醜いことをする」という理由がよくわかると思いますよ。榎本先生は人間関係のグロテスクな部分の描写がとても巧みですからね。
――そうした物語は、男女問わず疑似体験できそうな内容の話が多いですからね。