【クロサカタツヤ×板倉陽一郎】実はリクルート存続の危機!? リクナビ内定辞退率が法律違反以上にマズイわけ

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●匿名加工情報の作成・提供に係る公表状況
(出典)個人情報保護委員会 個人情報保護を巡る国内外の動向(データ利活用に関する施策の在り方関係)平成31年3月4日発表より

――リクナビが就活生の「内定辞退率」を、ユーザの閲覧状況などから勝手にスコア化して企業に販売していたとして大きな問題になっている。単なる個人情報ではなく、就職活動という人生を左右する情報の取扱いとしてあるまじきこの裏切り行為に非難の声が上がり、各大学から“リクナビの不使用宣言”も出されている。「第2のリクルート事件」として会社存続すら危ういと評されるほどのこの一件、いったい何がマズかったのかをこの分野のエキスパートに聞いてみた。

クロサカ 今月は、弁護士の板倉陽一郎さんをお迎えしています。板倉さんは、個人情報保護法をはじめ、いわゆる情報法のエキスパートとして多分野で活躍されています。先日、リクルートキャリアが運営する「リクナビ」が就活生の内定辞退率をスコア化して、顧客企業に販売していた事件についてお話をうかがいます。

板倉 今回の「リクナビDMPフォロー」【1】事件は、リクナビ側がユーザから同意を取らずに個人情報を第三者提供していたことが問題です。個人情報保護委員会【2】による勧告内容を見ると、「第三者提供違反」のみならず、「安全管理措置違反」についても言及されていますね。

 そもそも、リクナビをはじめとする就活サイトは、就活生と募集企業とを取り次ぐ「ポータル機能」と、新入社員を募集する会社側に対して「応募者管理システム」の2つの機能を提供しています。そして、ポータル機能で集めた就活生の情報と、応募者管理システムで企業側から受託した応募者のデータとは、分けて扱わなければいけないのに、リクナビはそのデータを混ぜて企業側に提供しました。同意なしに提供したという、個人情報保護法23条の「第三者提供違反」は分かりやすいですが、自社の保有するデータと受託しているデータの分別管理について20条、「安全管理措置義務違反」を認定している部分はそれなりに専門的知識がないと理解できないところです。

クロサカ リクナビ側としては、「ひとつのサービスなのだから、データの取扱いもドンブリでいいだろう」という意識だったんでしょうね。

板倉 「リクナビDMPフォロー」は、2018年3月から開始されたサービスで、19年3月にリニューアルされている。報道によればリニューアルの前後で、リクルートが持つ就活生の情報と、企業が持つ応募者情報とを紐付ける方法が変わっています。リニューアル前はネット広告で使われるサードパーティクッキー【3】という技術を使っていたようです。この方式について個人情報保護委員会は、形式上はデータを分離しているので、違法性はない(「リクルートキャリアから顧客企業への個人データの第三者提供が行われない形態」(リクルートキャリアに対する勧告等についての個人情報保護委員会の公表文書)としています。

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