日本のセックスレス率47%超――マンガ『1122』が提案するソリューションとしての不倫

――サブカルを中心に社会問題までを幅広く分析するライター・稲田豊史が、映画、小説、マンガ、アニメなどフィクションをテキストに、超絶難解な乙女心を分析。

 日本の夫婦の47.2%がセックスレス(過去1カ月以上セックスをしていない状態)だそうだ(16年、一般社団法人日本家族計画協会調べ)。夫からすれば「勃たないんだからしょうがないじゃん、以上」案件ではあるが、妻が「解決したい」と望めば無視するわけにはいかない。そこで参考としたいのが、「モーニング・ツー」(講談社)連載のコミック『1122(いいふうふ)』である。

 主人公は35歳のウェブデザイナー一子(いちこ)と、文具メーカー勤務の夫・二也(おとやん)。結婚7年目で子供なし、2年ほどセックスレスの夫婦だが、彼らは「婚外恋愛許可制」を敷いている。なんと、おとやんの不倫をいちこが認めているのだ。しかも、発案はいちこである。

 きっかけは、おとやんのセックスの求めを手ひどく拒否したいちこが後ろめたさを感じ、その後おとやんに好きな人ができたこと。話し合いの末、おとやんは月イチのデート、および相手と肉体関係を持つことをいちこに許された。

 セックスしたい夫と、したくない妻。しかし仲は悪くない。そのソリューションとしての、婚姻関係を結んだままの公認不倫制。実に合理的で先進的。「あたらしい夫婦のかたち」というやつだ。

 ところが、ある時いちこが不倫相手に嫉妬し、おとやんとのセックスを願うようになる。しかし、おとやんは今さらいちこにムラムラしない。努力はしてみるものの、勃たない。鬱屈したいちこは女性用風俗の門を叩き、大学生のホストから久々のときめきと性的な満足を得る。と同時に、おとやんが不倫相手とトラブったことで、改めて夫婦の絆が強まりかける。

 しかし今度は、いちこが“買春”している事実を知ったおとやんが、いちこに不信感を募らせる。不倫と違い、いちこは「快楽を金で買っているから」というのがおとやんの言い分。ここまでが、既刊5巻の展開である。

 ポイントは、彼らの夫婦仲そのものは基本的に良好だということだ。相手を尊重し、長所をたびたび再確認しあう。その上で、自分の感情に折り合いがつけられないことに悩み、夫婦関係をどうにか維持できないか真面目に考える。しかし、それでも答えが出ない。セックスレスという“報い”を受けるべき責が、2人のどこにも見当たらないのだ。これは根が深い。

 実は本作最大の論点は、セックスレスそのものではない。「結婚相手からは得られない喜びを、結婚相手以外から手配することは、許されるのか?」という根源的かつ哲学的な命題だ。

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2024.11.24 UP DATE

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