――巨匠、スティーブン・スピルバーグ監督は、多作であることを差し置いても、多くの戦争をテーマに取り扱ってきた。近年でも『ブリッジ・オブ・スパイ』や『戦火の馬』など精力的に表している。スピルバーグの戦争映画を追いながら、ハリウッドと戦争の一面を見ていこう。
(絵/沖 真秀)
ドナルド・トランプが大統領に就任してからというもの、多くの国へ戦闘姿勢を見せているかのようなアメリカ。だが考えてみれば同国は、それ以前からもずっと戦争を続けている。アメリカとは常に、戦争とそれへの批判が渦巻く国でもあるわけだ。
同国では、時にストレートな批判的作品として、そして短絡的なエンタメとしても戦争をテーマにした映画が量産され続けている。そんな中で、ハリウッドで多数の衝撃的な作品を生み出し、かつ数々の称賛や批判を浴びてきたのが、映画監督スティーブン・スピルバーグだ。
映画ファンは別として、その名を聞くといまだ『E.T.』(82年)や『ジュラシック・パーク』(93年)『インディ・ジョーンズ』シリーズ(81~08年)といった作品群が、咄嗟に浮かぶ人も少なくないだろう。だが特に近年は、硬派な戦争関連作品を立て続けに放っている。もちろん、監督として半世紀近く活躍しているだけに、“スピルバーグが撮る戦争”にもアプローチやスタイルの変遷がある。
本稿では『スティーブン・スピルバーグ論』(フィルムアート社)『フィルムメーカーズ スティーヴン・スピルバーグ』(宮帯出版社/ともに編著)、『スピルバーグ、その世界と人生』(大久保清朗氏との共訳/西村書店)と、スピルバーグ関連の書籍を手がけてきた映画評論家の南波克行氏のガイドをもとにして、アメリカと戦争の距離感がスピルバーグにどう作用し、戦争をテーマにした映画を創り続けさせてきたのかを探っていこう。