【片山慎三】衝撃作『岬の兄妹』監督が推薦!――今の韓国映画の原型!? 60年前のサスペンス

――近年『新感染』『神と共に』など、国内でもメガヒット作を連発している韓国映画。そして、『冬のソナタ』ブームから15年近く経った現在も根強いファンをつけている韓流ドラマ。傑作揃いの韓国エンタメ作品群から、韓流の目利き達が独特の視点で映画・ドラマの深奥を語る。

■片山慎三(映画監督)

1981年、大阪府生まれ。ポン・ジュノ監督の『母なる証明』(09年)や山下敦弘監督の『マイ・バック・ページ』(11年)などに助監督として参加。今春公開された自主制作映画『岬の兄妹』が話題を呼び、ロングラン上映されている。

 僕が韓国映画から学んだことはたくさんありますが、一番は「表現にブレーキをかけない」ということですかね。不快に思われるようなシーンも、しっかりと描く。『岬の兄妹』を撮るときも、それを意識していました。

 韓国とのつながりでいうと、オムニバス映画『TOKYO!』(08年)の撮影でポン・ジュノ監督と知り合ってから、1年ほど韓国に滞在して助監督として手伝ったこともありましたが、もともと僕が韓国映画を見始めたきっかけは『シュリ』からですね。

 この頃の作品で印象に残っているのが、イ・チャンドン監督のデビュー作『グリーンフィッシュ』【10】です。映画の終盤でヤクザの愛人と恋愛関係になった主人公が、銃で撃たれて殺されてしまうのですが、被弾して車のボンネットに倒れかかり、窓ガラス越しに吐く息の曇りが徐々に薄くなっていくという、死に至る演出がうまい。

 一方でタブー破りといったら、民主化闘争を描いた『1987、ある闘いの真実』など、実在の事件を題材にした作品は面白いですね。特にキム・ギドク監督の助監督だったチャン・チョルスの『ビー・デビル』【11】はヤバいです。ある女性がソウルから生まれ故郷の島に戻った際に、島に残っていた幼なじみの女性が旦那からDVを受けていたり、島民の慰み者にされていたことを知ります。長い間、島民たちに虐げられてきた女性は島から脱出しようとするのですが、その間にこれまで彼女をイビってきた姑や旦那に復讐していくんです。味噌を塗りたくって殺したりなんかもします。こう聞くと、キワモノ映画のように思われそうですが、作中ではちゃんと人間模様が描かれているので面白いです。

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.11.24 UP DATE

無料記事

もっと読む