シリコンバレーが中国ベンチャーを「パクる日」

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

ピンドゥオドゥオ

元グーグルのエンジニアである中国人のコリン・ファンCEOが2015年に立ち上げたソーシャルショッピングサービス。中国のメッセージアプリであるWechat(微信)上で、友人や家族を巻き込みながら、ゲーム感覚で買い物をする仕掛けで大ブームを巻き起こした。中国の地方都市を中心に4億人以上のユーザーを抱えており、イーコマース分野でアリババに次ぐ第2位の座にまで上り詰めている。

 米国で流行しているビジネスを、あとから中国企業が「パクる」時代から、反対方向へシフトしているのかもしれない。

 2019年3月中旬、米国のサンフランシスコ市(カリフォルニア州)で、200社以上の有望なベンチャーが製品やサービスをお披露目するイベントが開かれた。これはYコンビネーターという、シリコンバレーでも屈指の影響力を持つベンチャーキャピタル(投資機関)が主催したイベントだ。そこに参加した、スクラムベンチャーズ共同創業者、宮田拓弥氏からこんな一言を聞いた。

「今回驚いたのは、中国のモデルをコピーする起業家たちが複数いたことです。水の流れる向きが、逆方向になってきています」

 これまでテクノロジーの世界では、中国が「パクる」のが当たり前だった。アップルのスマートフォンをパクったのは、中国のシャオミ(小米)だった。製品のみならず、故スティーブ・ジョブズの服装からプレゼンテーションのやり方まで、そっくり真似したコピープロダクトを見た時、その完成度にむしろ驚嘆したくらいだ。

 またある調査によれば、YouTubeがグーグルに買収されて世界的に有名になった翌年、中国ではYouTubeをパクった類似サービスが4000以上も誕生したという。

 そんなパクリ大国だった中国が、テクノロジー産業の成長に伴って、ついにパクられる側になっているというのだ。そして今回のイベントで話題だったのが、中国発のソーシャルショッピングサービスの「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」だ。多くの日本人は知らないが、15年に誕生した同社は、中国では合計4億人以上のユーザーを抱えている巨大なオンライン上のショッピングサービスになっている。その仕組みをまず、紹介したい。

地方都市で生まれたダークホース

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