――21世紀型盆踊り・マツリの現在をあらゆる角度から紐解く!
「泉州ナイト」では、10名を超える音頭取りを大阪から招聘。全国的にもめずらしいノンストップの生演奏により、満員の盆踊りフリークたちが踊り狂った。(写真/大石慶子)
東京は、かつて盆踊り不毛の地だった。現在では夏ともなると大小の盆踊りが東京のあらゆる地で行われるが、昭和初期までは佃島(中央区)など一部の地域で行われていたのみだった。現在のように活発になったのは戦後、それも高度経済成長期以降のことだ。
だが、そのように盆踊り文化のなかった土地だけに、東京は日本各地の盆踊りを“輸入”し、独自の文化を作り上げてきたともいえる。去る3月16日、そんな東京ならではの盆踊りイベントが墨田区本所で開催された。大阪南西部、泉州地域に伝えられる泉州音頭の一会派を丸ごと招いた「泉州ナイト」である。
泉州音頭といってもピンとくる方は泉州出身か、もしくはかなりの盆踊りフリークだろう。全国的に知られる河内音頭と比べると知る人ぞ知る存在だが、岸和田を象徴とする大阪ディープサウスの音頭だけに、そのサウンドはファンキーそのもの。「泉州ナイト」にも老若男女の盆踊り愛好家が集まり、音頭取りたちの熱演と三味線と太鼓が生み出すディープなグルーヴに酔いしれた。
「泉州ナイト」実行委員会のひとりであり、『今日も盆踊り』(タバブックス/15年)という著作もある小野和哉氏が泉州音頭に魅了されたのは2年前のことだったという。同氏が話す。
「妙に土着感あふれるねっとりとした演奏、良い意味で気負いを感じない踊り子たちのダラダラとした動き、ノンストップで延々と続く音頭、クライマックスに唄われる伊勢音頭のカッコよさに衝撃を受けました。また、泉州では御花をくれた方に対して、音頭取りが唄の中でその名前と感謝の言葉を述べるのですが、それが最後の30分くらい延々と続くんです」
小野さんによると、今回東京にやってきた「泉州音頭 宝龍会」のほうでもかねてから「東京で音頭を取りたい」という強い思いがあったとか。小野さんや東京の盆踊り仲間がその思いを受け止める形で、今回の東京公演が実現することになった。その背景には、地元団体のこんな思いがあったのだという。