女性蔑視がまかり通った世界の変調――R・ケリー“セックスカルト”は悪か? USヒップホップのイビツな性

――R&BシンガーのR・ケリーが若い女性たちを洗脳し、共同生活を送っていた――。そんな“セックスカルト”問題で米国社会がざわついている。一方、ラップのリリックには相変わらず「ビッチ」「プッシー」が多用され、MVでは女の子が尻を揺らす。今、ヒップホップと性の関係はどうなってるの!?

過去に未成年淫行事件を起こした6ix9ineは、強盗、殺人未遂、麻薬取引など多数の罪にも問われている。今後、最低でも47年の懲役刑が下される見込み!?

 2月22日、アメリカの大御所R&BシンガーのR・ケリーが未成年への性的虐待で逮捕された。彼の未成年淫行は今に始まった話ではなく、1996年に当時15歳の女性から性的関係やほかの未成年少女たちとのグループセックスを強要されたと告発されて以来、2008年には当時14歳の少女と撮ったセックスビデオが裁判沙汰になるなど、これまで何度も訴えられた。だが、すべての容疑を示談でもみ消している。

 今回の逮捕の契機となったのは、19年1月に3夜連続で放送されたドキュメンタリー番組『Surviving R. Kelly』(Lifetime)だ。ケリーが未成年を含む複数の女性を自宅に軟禁、洗脳して“セックスカルト”を築いていたことや、94年に当時15歳だった女性シンガーの故アリーヤとの婚姻届を出した際、彼女の年齢を18歳と偽証したことなど、悪行の数々が当事者や目撃者の口から語られた。

 他方で、18年には若手ラッパーの6ix9ineが、3年前に当時13歳の少女と淫行を働いた罪で保護観察処分を受けている。ヒップホップ界でもラッパーによる性的暴行事件が後を絶たず、またそのリリックには伝統的に“bitch(あばずれ)”や“pussy(マンコ)”といった女性蔑視的なスラングが頻出する。そこで本稿では、米国ヒップホップ/R&B文化におけるセックスの現在に迫りたい。

金、麻薬、女をいかに支配するか

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