――「ミッション系」と呼ばれるキリスト教系の大学には、「お嬢様が多い」「美人が多そう」というイメージを持っている人は少なくないかもしれない。実際にミッション系大学は読者モデルや女子アナを多数輩出してきた、というデータもあるにはある。そのイメージ誕生の背景と、ミッション系大学と美人の関係を追う。
『ミッションスクールになぜ美人が多いのか』の表紙。内容は、実は硬派で骨太だ。
「女子アナ、読者モデルはなぜ3K大学(かわいい、金持ち、キリスト教)出身に多いのか」。ピンク色の帯にそんなキャッチコピーが書かれた『ミッションスクールになぜ美人が多いのか―日本女子とキリスト教』(朝日新書)という本が昨年11月中旬に発売された。なおミッションスクール(大学の場合はミッション系大学)とは、キリスト教の教えを教育理念とし設立され、運営されている私立学校のこと。実際に「かわいい人が多そう」という印象を持っている読者も多いはずだ。
同書は3人の共著で、そのうち本書の発端となる問題提起を行ったのは井上章一氏。『美人論』(朝日文芸文庫)など美人関連の著書も多く、2015年に『京都ぎらい』(朝日新書)がベストセラーとなった国際日本文化研究センター教授だ。
井上氏が担当する第一章では、ミッション系大学に籍を置く読者モデルの多さの背景を考察。『大学ランキング2007年版』(朝日新聞社)に掲載されていた「女性ファッション誌への学生モデル登場校」のランキングも紹介している。そのランキングは『JJ』(光文社)、『CanCam』(小学館)、『ViVi』(講談社)、『Ray』(主婦の友社)4誌の2005年1~12月の誌面を調査したものだ。詳細はP72の表にまとめた通りだが、ベストテンには青山学院大学(1位)、立教大学(2位)、神戸松蔭女子学院大学(5位)、神戸女学院大学(8位)、恵泉女学園大学(10位)と5つのミッション系大学がランクインしている。東京のマンモス私立総合大学の多くが顔を出さず、神戸のミッション系大学がランクインしていることは、意外に感じる人も多いだろう。
井上氏の担当する第一章は、このような実証的なデータを含みつつも、ライトな読み物として楽しめる内容だ。一方でその中では、特にプロテスタント系大学に読者モデルが多いことに触れながら、「読者モデルの輩出数を分析した(プロテスタンティズムの)受容史の研究は、ただのひとつもない」(カッコ内は筆者補足)という興味深い問題提起をしている。