――“美人”の対義語として、広く使われている“ブス”という言葉。特に女性の容姿を侮蔑する表現として非難のやり玉に挙がる一方で、近年では“ブス”をヒロインとした作品も多く生まれ始めている。こうした一種の“ブス”ブームの背景にあるものとは、一体なんなのだろうか? 女性識者らの意見と共に探っていく。
(イラスト/しまはらゆうき)
今回の特集テーマは“美人”だが、本稿ではその対義語とされている“ブス”という言葉や概念に着目してみよう。というのも、近年、日本のコンテンツ業界、特に女性向けの分野では“ブス”を主要なキーワードとして扱う作品がじわじわと増えつつある。中でも、主人公であるヒロインが“ブス”という設定の作品が存在感を発揮し始めているのだ。
特に顕著なのがマンガ作品においてで、冴えない容姿のヒロインがクラスの人気者の男子と距離を近づけていく『ブスに花束を。』(KADOKAWA)、やはり“不細工”な女子がヒロインの『圏外プリンセス』(集英社)といったタイトルが挙がる。
また、原作人気から実写化されるマンガ作品も多い。醜いヒロインが美しい女と顔を入れ替えながら女優としての成功を目指す『累』(講談社)は昨年、実写映画化され話題に。同じように、容姿端麗な少女と「ブス」と呼ばれる少女が体を入れ替える『宇宙を駆けるよだか』(集英社)も、昨年Netflixにてオリジナルドラマとして公開された。
こうした“ブス”作品はマンガだけにとどまらない。小説界隈からも、「自他ともに認める“絶世のブス”ながら、気立ての良さでウェディングプランナーとして活躍する」女性がヒロインのライト文芸『Bの戦場』(集英社)がヒットし、今年3月には実写映画の公開を控えている。
このように、ヒロインが明確に“ブス”“不細工”と表現される作品が人気を博し、人気女優や女性芸人が主演を務めるメディアミックスの対象にもなっている、という事実は興味深い。