和田アキ子はなぜ嫌われる? 歌手か、バラエティタレントか、その奇妙なバランス感覚

『アッコがおまかせ~和田アキ子50周年記念トリビュート・アルバム~』(ユニバーサル ミュージック)

「女性が嫌いな女性タレント」「紅白に出て欲しくない歌手」など週刊文春が恒例で行っているアンケートで、毎年ベスト1に輝くのが和田アキ子(68)。「偉そう」「いつも威張っている」など嫌いな理由も明確。和田の全盛期を知らない若い人からは「お笑いタレントかと思ったら、本当は歌手だったとは」という声も珍しくない。「嫌い」という人が圧倒的に多く、逆に「大好き」というファンはほとんど聞かない。

 本業は歌手。大阪の高校を中退してジャズ喫茶で歌っていたところを当時の「ホリプロ」社長にスカウトされて上京。1968年に「和製リズム・&ブルースの女王」の触れ込みでデビュー。今年50周年を迎えたが、近年、ヒット曲は皆無。歌手としての目立った活躍はなく、テレビで見るのはもっぱらバラエテイー番組ばかり。唯一のヒット曲がデビュー2年目に出した「笑って許して」と、その2年後に出した「あの鐘を鳴らすのはあなた」の2曲で、今も代表曲になっている。

 歌は確かに上手いが、上手いからといってヒットするわけではない。ヒット曲から遠ざかると、「元番長で大阪のヤンキー」の豪快なキャラでバラエテイー界に進出という異色の経歴を辿ってきた。

「本業はあくまでも歌手ですから、毎年1枚はCDを出していますが、オリコンチャートではいつも圏外。ソウルでもジャズでも歌の上手さはトップクラスですが、歌手はCDが売れてナンボの世界。千枚も売れていないのでは? コンサートもなかなか人を集められず開催は少ないほう。50周年で人気グループ“BOYS AND MEN”の研究生とコラボした曲を5月に出してオリコン上位にランクインしましたが、彼らの人気に便乗した形。9月の武道館コンサートの公演も2日間で3万人動員したが、これも鈴木雅之らゲスト出演のおかげ。歌手としては他力本願な状況です」(音楽関係者)

「紅白」出場は39回、司会もトリも務めた「紅白の顔」でもあったが、5年以上前から「なんで和田は出ているの?」「事務所のコネで出ている」などと、世間の風当たりが強くなってきた。NHKが世間の声に耳を傾けたわけではないだろうが、一昨年についに落選。40回という節目の出演は叶わなかった。今年の落選で3回続けて紅白から外れている。にもかかわらず、くだんの「文春」のアンケートでは「紅白に出て欲しくない歌手」に3年連続で1位に輝く珍快挙。紅白に選ばれた歌手を「出して欲しくない」というのはわかるが、落選したにも関わらず未だに「出て欲しくない歌手」というのは和田をおいて他にいない。ネットなどでも不出場を惜しむ声はなく、「2度と出て欲しくない」など落選を歓迎する声ばかり。芸能界全体を見渡しても、これほど嫌われる歌手はそういない。

「美空ひばりや北島三郎といった、歌手として実績を重ね、きちんと歌手中心に活動していれば、多少偉そうにふるまっても文句は言われないだろうが、ヒット曲が若い頃の2曲だけ。しかも、タレントはみんな私の子分みたいな言動が嫌われる最大の理由でしょう。もっとも、実績を作った歌手や役者は決して驕ることなく謙虚。和田にはそれがないように見える」(テレビ関係者)

 一時は、芸能界のご意見番としてワイドショーで毒舌ぶりを発揮していたこともあったが、今では「アンタに言われたくない」という声も出始め、最近は自重気味。

 関西のご意見番、上沼恵美子(63)と比較するとその差は歴然だという。関西ローカルでいくつもの冠番組を持つ上沼は歯に衣着せぬ意見で多くの支持を得ている「関西の女帝」

「上沼はオバちゃんキャラで関西のオバちゃんから絶大な支持を得ている人気者。もちろん、上沼を上から目線と嫌う人もいますが、好きな人も多く、敵も味方もいるからタレントとしてバランスを保てている。同じ大阪出身の和田は不思議なことに大阪では不人気。『アッコにおまかせ!』(TBS系)も関西では視聴率は悪く、同じ時間帯の上沼の番組にボロ負け」(在阪のテレビ関係者)

 歌手としてヒット曲がなくとも、自身の番組で高視聴率を取っていれば、そうバッシングは受けないだろうが、タレントとしてもさしたる実績が伴わないのが上沼との決定的な差。芸能関係者が苦言を呈する。

「タレントに転身するや否や、喧嘩が強い、酒が強いともてはやされ、“ゴッド姉ちゃん”と呼ばれ姉御のように後輩タレントを集めては酒の席での武勇伝が語り継がれ、和田のイメージが定着した。60歳を過ぎた今もそのイメージを引きずっている。今さらキャラを変えるのも難しい。とはいえ歌手とまたヒット曲を出すのも難しい」

 すでに和田の看板番組「アッコにおまかせ!」も視聴率の低迷が続き、来春で打ち切りの声も囁かれ出しているが。

「とはいえ、和田はホリプロ創設者が直々にスカウトして歌手にした。彼女の首に鈴をつけられる者がいない。番組スタッフも切るに切れない状態と聞きます」(テレビ関係者)

 何ごともなく今もバラエテイーで活躍する和田。その心中たるやいかがなものか―。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

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