中国から現金を消滅させた、恐るべき16兆円企業の「正体」

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー『アリペイ』

アントフィナンシャルが運営する、世界最大のデジタル決済サービス。アリババのプラットフォーム上で、個人同士が安心してモノを売り買いできるように、同社が代金を預かって、取引が成立したらお金を受け渡す「エクスロー」のサービスとして始まった。現在は中国のデジタル決済、消費者ローン、保険販売などお金にまつわるサービスを牛耳る巨大アプリに。近年はこの仕組みをマレーシアやインドほか、海外市場にも輸出しており、20億人が使うサービスになる野望を掲げている。

 2018年12月4日、新しく登場したQRコード決済サービス「PayPay」が、総額100億円をバラまくという空前のキャッシュバックキャンペーンを始めた。

 このアプリを使って商品を買うと、なんと金額の20%が電子マネーとして還元されるだけではなく、一定確率でお買い物がタダ(上限10万円)になるという大盤振る舞いをしている。目ざといユーザーは、このバラマキにあやかろうと、ビックカメラなどの対象店舗に駆け込んだ。

「iPad Proが当たった!」「海外旅行がタダになった」――ツイッター上では高額商品をゼロ円で手にしたユーザーたちの投稿によって、一種のお祭りさわぎに。一時はパンク状態になってしまい、サービスが停止にまで陥った。

 ちなみにアプリを使うためには、まずはスマートフォン用のアプリをダウンロード。そして電子マネーとしてチャージをするか、自分の持っているクレジットカードと紐付けて、電子決済をするための準備をしなくてはいけない。ユーザーはスマホ画面にQRコードを提示して、支払いをする。お店側も同じように、QRコードを読み取ることによって決済を受け付けるわけだ。

 ヤフーとソフトバンクが仕掛けたこの「100億円あげちゃうキャンペーン」は、これまで現金の支払いが根強かった日本のユーザーや店舗に、現金なしでお買い物をするスタート地点に立ってもらおうというものだ。

 もし、これから日本のユーザーたちがPayPayを使ってお買い物をするようになれば、単純に支払いが楽になるだけではなく、お金と消費にまつわるあらゆるデータを集められるようになる。そんな話題のPayPayのモデルは、中国最大のイーコマース企業であるアリババグループ傘下の、アントフィナンシャル(蚂蚁金服)だ。

銀行の役割を根こそぎ奪う「破壊力」

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