GAFAが、漫画の表現規制を握っている!?――「漫画村」騒動後、売り上げも増えた!? 現役マンガ編集者匿名座談会

――マンガ雑誌の相次ぐ休刊ラッシュや「漫画村」ブロッキング騒動など、さまざまな話題を振りまいた2018年のマンガ業界。そんな業界の現状を、現役マンガ編集者たちがぶっちゃける。台頭する電子書店に翻弄されたり、作家のSNS炎上を警戒したり……近年のマンガ業界トピックを総ざらいしていきます!

“異世界転生もの”のブームを受けて、各出版社はマンガでも大々的に展開。ライトノベル分野に強いKADOKAWAでは、その傾向は目覚ましく、特別サイトを作るなどして盛り上がりを見せている。画像は「異世界コミック」より。

[座談会参加者]
A…大手出版社、男性誌編集者(40代)
B…大手出版社、少年誌編集者(20代)
C…中堅出版社勤務、雑誌・アプリ担当(40代)
D…中堅出版社に勤務後、現在フリー(30代)

A 年末のマンガアワード企画も発表されましたけど、今年何か目立って売れた作品ってありましたか?

B 爆発的に売れた新しい作品というのはちょっとなかったですね。自分が好きな作品はあるにせよ、今年ムーブメントをつくったようなタイトルというのは……。

C 「これ!」というタイトルはない。どちらかというと個人的には長く連載していて、ここに来てまた面白くなってる作品がすごいなと感じた年でした。たとえば『結婚アフロ田中』(小学館)とか。

D 『アフロ田中』、めっちゃ面白い!

C ずっと面白いですけど、今年に入ってさらに面白いですよね。『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』(講談社)なんかもそう。やっぱり作品のピークというのはあって、序盤だったり中盤だったり、メディアミックスのタイミングだったりする。この作品は比較的早い段階で映像化されているけど、そこから時間が経った今、さらに面白くなってる。

A 新しいところでいうと、今年ツイッターでバズって来年単行本化が予定されてる『王様ランキング』。これは単行本を何部刷るのかなって気になってます。あと、どんな装丁にしてくるか。

D 「コミックビーム」から出すんでしたっけ? すごい装丁で出してきそう。「ビーム」の『銃座のウルナ』(いずれもKADOKAWA)とかも、ものすごく凝った特殊なカバーだったじゃないですか。

A ただ、その特殊なデザインも途中で心が折れたんでしょうね。4巻から普通の装丁に変わってた(笑)。

C でも、紙の本が好きな人間としては、ああいう気合の入った装丁を見るとうれしいですよ。

A ただ、重版分岐(重版時の部数的な損益分岐点)を考えると怖いですよ。特殊な紙やデザインを使うとどうしても原価が上がるから、そう簡単に重版できなくなる。メディア化のタイミングで重版をかけたいのにコスト的にできなかった、なんて作品の噂も聞きますから。

B 作品単位ではないですけど、ジャンルでいうと、今はなんといっても“異世界転生”ですよね。作品名に「異世界」って入ってたらとりあえず売れる。

A いわゆる、なろう系の異世界転生ものは、ちゃんとプロモーションしたら1巻3万部とかは堅いですからね。

B 『転生したらスライムだった件』『転スラ日記』を筆頭に「月刊少年シリウス」(いずれも講談社)なんかは、異世界バブルですごい勢い。単行本の帯にもとりあえず「異世界」っていう言葉を入れたいですもん。

D 市場でいうと、TL・BLはすごいですね。電子ではとにかく桁が違う。今、各社女子向けのちょいエロを意識したレーベルをどんどん立ち上げてるでしょう? 白泉社の電子雑誌「ハレム」とか、講談社の「姉フレンド」。集英社も「マンガMee」っていう、オールジャンルでの女性向けマンガアプリを出したりしている。

A 今、昼ドラって地上波ではなくなったじゃないですか。あの視聴者層が読む形で、「めちゃコミック」とか「まんが王国」みたいな電子書店に流れている。時間で見ても、まさに昼ドラの放送時間に売れてたりするんです。

D だから、バナー広告も時間によって掲載する作品を変えてるんですよ。昼ドラの放送時間中は女性向けマンガにしていたり。

 今はちょっとエッチだったり、少し暗い、陰惨な話がウケる。「TLと見せかけて実はエロなし」みたいな作品もはやっています。『男女2人での残業は、7割セックスしてるから』とか『放課後、ラブホで、先生と。』(共にCOMIC維新)とか。思い切りエロ系っぽいけど、実はただ先生が放課後ラブホでバイトしてるっていうだけで、エッチはなし(笑)。でも、売れてるんですよ。

B 『その男、運命につき』(小学館)の北川みゆき先生が描くような、エッチはないけどエロいみたいな作品ね。そういうのを含めて、ベテラン作家が新しい媒体で新しい活路を見いだすパターンも増えてる気がします。男性向けだと、なろう系のコミカライズで生き残っていったりしている。

D なろう系の人気を象徴するように、広告バナー出稿でウェブサイト「小説家になろう」は激戦区になっています。電子書店はバナー広告に命をかけてる感じで、本当に億単位で広告打ってますからね。

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