通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!
●2030年までのIoT・AIの就業者数へのインパクト
出典:総務省「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)
――AIだ、機械学習だ、ディープラーニングだと、いろんなバズワードを僕らは浴びたけれど、なかなか終わらないAIブーム。ここまで来たら、もうブームじゃなくてもっと大きな流れなんだと認めてもいいのかもしれません。でも、今さらそんなことでは、もはや手遅れだと日本有数のAIベンチャーの役員は厳しく言い放ちます。AI化待ったなしのこの世界、一体全体僕たちはどうしたらいいのか?
クロサカ 1年前に研究者の中西崇文さん【1】とAIの可能性と日本における危惧についてお話ししましたが、今回はAI開発を手がけるスタートアップであるエーアイスクエアの荻野明仁さんをお招きし、日本のビジネスの現場におけるAI導入について伺います。まずはAIを使って、どんなビジネスをされているんですか?
荻野 我々は機械学習による自然言語処理【2】で、企業のコールセンターの応答支援やアフターコールワークの自動化、自動応答チャットボットなどの開発をお手伝いしています。
クロサカ 最近はいろんな分野でAIが活用されています。特に企業のサポート系については、大手でも取り組んでいますよね。その分野って今、どんな市場環境なんでしょうか。
荻野 自然言語処理に関しては、プレイヤーが大きく2種類に分かれています。完全に色分けはできないんですが大別すると、ひとつは大手企業が中心でIBMのWatson【3】を筆頭とした伝統的なIT企業が取り組んでいる、いわゆるルールベースの自然言語処理。もうひとつは我々のようなスタートアップが中心にやっている機械学習です。機械学習のほうが技術的に新しい世代なので、大手企業とコンペになっても性能で負けることはまずありません。
クロサカ なぜルールベースよりも機械学習のほうが有利なんですか?
荻野 ルールベースは、人がルールを考えて記述していくので、ルールを山のように作らないといけない。機械学習は教師データ(AIの手本になる問題と答えがセットになったデータ)を用意して、それをコンピュータに学習させると、アルゴリズムを自動的に生成してくれます。後者のほうが圧倒的に手間はかからないし、メンテナンスも楽なんです。
クロサカ AIの開発・育成では何よりデータが大事といわれるゆえんですね。教師データがなければ始まらないし、その量によって能力も左右される。だから、教師データをどうやって集めてくるのかが、競争力になっている。