――今年も数多くの邦画が公開され、中にはヒットを飛ばしたものもあったが、興行収入で爆死した作品や、もはや話題にすらならなかった作品も多々あり……。映画ライターの稲田豊史とよしひろまさみちの両氏が、2018年の邦画界を振り返りながら、アノ問題作について好き勝手放談する。
『世界シネマ大事典』(三省堂)
『万引き家族』のカンヌ映画祭パルムドール受賞に始まり、『劇場版コード・ブルー』が邦画実写映画として15年ぶりの興行収入90億を突破、さらにSNSの口コミで拡大した『カメラを止めるな!』など、話題も少なくなかった今年の邦画界。しかし、そんな話題作の陰でひっそりと爆死していた作品もちらほら……。そこで今回は、本誌でコラム「オトメゴコロ乱読修行」を連載する稲田豊史氏と、朝の情報番組『スッキリ』で月1の映画紹介コーナーを担当する映画ライターのよしひろまさみち氏に、この1年の邦画を振り返ってもらいつつ、2018年ラジー(最低映画)賞を選定してもらった。
稲田:今年は90年代に青春を送った客を当て込んで作った映画が結構ありましたね。で、いきなりラジー賞候補を出しちゃうんだけど『リバーズ・エッジ』はひどかった。
よしひろ:びっくりしたよね、何これって。
稲田:サブカル界隈の事前の盛り上がりはあったんですよ。行定勲監督に、主演はみんな大好き二階堂ふみ。そしてカリスママンガ家・岡崎京子の最高傑作といわれた原作で、いざ観に行くと……大事故案件(笑)。「あなたにとって愛ってなんですか?」みたいな行定さんのインタビューが挟まれるアバンギャルド(笑)な様式で。
よしひろ:何? 『ワンダフルライフ』(99年)のまねごとなの?みたいな。アスペクト比4:3みたいな古い演出にも引いたわ~。
――二階堂ふみの初脱ぎっていう話題もありましたが。
よしひろ:それ、見たいか? って思う。
稲田:もはや本編は小沢健二の新曲を聴くための前説でしたね。『SUNNY 強い気持ち・強い愛』【1】もそうですけど、どうも作り手が90年代カルチャーの影響力を過大評価していて、客層がもっと広いと思っちゃってますよね。『SUNNY』なんか「95年の女子高生」とさらに限定しちゃって……。