――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。
今月のテクノロジー『中国の監視カメラネットワーク「天網」』
中国政府が構築し、2015年にはAI活用が始まったといわれる監視カメラのネットワーク。英語名のスカイネット(Skynet)は、ハリウッド映画『ターミネーター』シリーズに登場する、人の敵であるコンピュータの名前と同じで、中国の監視社会のシンボルとして知られる。一方でこのテクノロジーは治安維持や犯罪率低下に貢献しており、中国社会を守っていると評価する市民も多い。
『「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム』(NextPublishing)
世界中で人工知能のディープラーニング(深層学習)の研究が進む中で、中国では個人特定をする「顔認識技術」のインフラが浸透している。すでに現地では億単位のコンピュータの“目”が、犯罪をキャッチし、犯人の顔を瞬時に識別するネットワークが稼働している。
日本や欧米を凌駕するスピードと投資により、国家ぐるみでデジタル化を進める中国は、未来のサービス溢れる楽園か、それともプライバシーなきディストピアか。14億人を抱えるデジタル・チャイナをレポートする。
中国の公安当局(警察)は、人工知能とテクノロジーで武装する。その標的になっているのは、すべての人のアイデンティティである「顔」だ。
今年8月、中国・貴陽市(貴州省)。あるセキュリティカメラの「目」が、バス乗り場の群衆 にまぎれていた、殺人事件の容疑者をとらえた。