――白物家電ブランドで販売シェア世界1位のハイアールに、世界市場を席巻するサムスン、LG。東芝の白物家電部門を買収した美的集団(マイディア)、シャープを傘下に加えた鴻海科技集団。今や世界の家電市場をリードするのは日本を除くアジアの家電メーカーだ。一方、日本製製品が後れをとっている背景には、業界が抱える闇があった。
『家電批評 2018年 11 月号』(晋遊舎)
スマートフォンの世界シェア1位は韓国のサムスン電子。白物家電の1位は中国のハイアール(Haier)。一方で日本の家電メーカーは、営業不振や身売りのニュースが近年続出。かつては世界の家電市場を技術でリードしていた日本メーカーだったが、物量の面では中国・韓国のメーカーに完全に追い抜かれた……という認識はもはや定説となっている。
一方で日本の家電量販店を訪れると、そこに置かれた製品は今も国内メーカーのものばかり。冷蔵庫や洗濯機では、中国メーカーのハイアールやハイセンス(Hisense)、そしてハイアールが三洋電機から引き継いだアクア(AQUA)の製品がごく一部に並ぶ程度。テレビもLG製品がわずかに置かれているだけで、いずれの製品も9割以上が国内メーカーのものという印象だ。
中国や韓国の家電メーカーは、なぜ世界の覇権を握れたのか? そして、その製品が日本でさほど流通していない理由は何なのか? 本稿ではその背景を、有識者の声をもとに検証してみたい。
まず、日本の家電売場で中韓メーカーの製品が少ない背景について、「家電市場の特殊性がある」とデジタル家電ライターのコヤマタカヒロ氏は語る。
「現在の家電量販店でもっとも買い物をするのは、50~60代の比較的お金を持っている層。彼らはやはり国産メーカーが好きなんです。そして中国や韓国の家電が実際に『安かろう悪かろう』だった時代も知っているので、そのイメージが今も強いのでしょう」
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏も、「やはり家電量販店では『中国・韓国の家電は売れないから置いていない』というのが一番の理由でしょう」と続ける。