読者プレゼントの基本ルール――景品表示法についていち弁護士の見解

――豪華な景品で読者を囲い込めるのであれば、雑誌の売り上げも増やせるかもしれないが、読者プレゼントにも制限がある──それが景品表示法だ。雑誌のプレゼント係はなんとなくは知っているものの、このややこしい法律を弁護士に解説してもらおう。

『景品表示法の法律相談 (最新青林法律相談)』(青林書院; 改訂版)

 前記事『雑誌不況でもこのページだけは超豪華!――緊急開催・刑務所からも応募が!? モノ雑誌の「読プレ」豪華番付!』で何度か言及された「景品表示法(以下、景表法)」。座談会では3万円を超えてはいけないことや、消費者庁から注意を受けることは都市伝説という声もあったが、ほかにはどういった規制があるのだろうか? 景表法に詳しい弁護士に聞いてみた。

──そもそも景表法とはどういった法律なのでしょうか?

弁護士:景表法は正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいまして、不当表示規制と景品類規制があります。健康食品などの事実と異なる広告表示を規制する不当表示規制、不当に高額な景品を付けることを禁止する景品規制、この2つの規制がまとまったのが景表法です。2つはまったく別の規制であり、摘発検査でも圧倒的に多いのが不当表示規制ですね。ちなみに、2012年の秋田書店が読者プレゼントを間引きしていた事件は、不当表示規制に引っかかったものです。

──秋田書店の件は景品規制の違反ではないんですね。

弁護士:はい。秋田書店の後に摘発された竹書房のプレゼント当選者水増しの例も、不当表示規制の違反になります。景品の企画が対象となっていますが、「何名様にプレゼントします」という虚偽の表示が問題となりました。ちなみに、雑誌に限らず、景品規制の違反で消費者庁に摘発された例はほとんどありません。

──そもそも雑誌の景品類とは法律上、何を指すのでしょうか?

弁護士:雑誌の「おまけ」のことを指します。景品も渡し方が2つあって、ひとつは全員がもらえる付録などの総付景品。総付であれば1000円未満の雑誌は、200円まで景品として提供できます。また、読者プレゼントのような景品提供に関しては、雑誌類では景品ひとつあたりの最高額は3万円となっています。景品類の総額は雑誌の売り上げ予定総額の2%以内になります。例えば、雑誌の定価が1000円だとして、普段1万部売れているとしたら、合計が定価(1000円)×部数(1万部)×0・02=20万円なので、20万円以内が限度です。

──仮に3万円や総額が超えた場合はどうなるのでしょうか?

弁護士:読者プレゼントなのに10万~100万円以上の景品をいくつも出していたら再発防止策の提出が求められたり、措置命令が下ることはあるはずです。とはいえ、よほど悪質なことをやらなければ、消費者庁から措置命令が来ることはありません。まぁ、付録や読者プレゼントが高価だったとしても、消費者に害を与えているわけではないので、あまり厳しく摘発しないのでしょう。

──読者プレゼントとは別に、モニター募集の場合も上限は3万円になるのでしょうか?

弁護士:モニターへの謝礼が労力の対価に見合ったものであれば景品には当たりませんが、そのような範囲を超えていることが多いようです。そのようなモニターを抽選で募集している場合は一般企業のプレゼント企画などと同様の「一般懸賞」という規制が、適用されることになるでしょう。このときに提供される景品の限度額は、雑誌が5000円未満の場合は取引価格の20倍、5000円以上の場合は10万円までです。

──先ほど、雑誌を購入すると全員がもらえる付録は200円までが限度額とありましたが、近年どんどん豪華になっているものもあり、当然200円では済まないだろうというものも見られます。仮に出版社が独自のルートを使ったりして、200円で仕入れていた場合はどうなるのでしょうか?

弁護士:特別なルートを使って実際に200円で製品を仕入れたとしても違反です。出版社の仕入れ価格ではなく、同等の品を一般消費者が購入できる価格が基準となっています。雑誌で高額な製品が付録として提供されている現在の状況を見ていると、世間には違法なものがたくさん出回っているという印象を受けますよね。

(構成/小峰克彦)

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