ハイロー新作はゾンビ映画になりかけた!? 監督&作家4人衆が語る『HiGH&LOW』の作り方

——平沼さんには、昨年我々が勝手に刊行したムック『HiGH&LOW THE FAN BOOK 俺たちはみんな、HIROさんに夢見させてもらっていた』でロングインタビューをさせていただき、“ハイロー世界”の作り方についていろいろとうかがいました。その平沼さんが、今回の『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』ではついに自ら監督を務められたわけですが、なぜ今作での監督登板になったんでしょうか?

平沼 昨年Huluで配信した「HiGH&LOW THE DTC」も、僕が監督だったんですよ。DTCは『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』でコブラたちとケンカして、山王連合会に亀裂が入り、黒白堂のケンカに参加していない間、彼らは何をしていたのか…、と本人たちも含めて話して、「やっぱりITOKANでアホみたいな会話してるんじゃない?」ってことになった。ITOKANのセットも建ててたんで、せっかくだからこれを使って何か撮ろう、ということで脚本を書いていって。でも久保監督や中茎監督は本編を撮ってる最中だから、「じゃあノリが撮れば?」ってことになり、そのまま映画まで引き受けることになった、っていう経緯ですね。なんかすみません(笑)。

——ハイローの脚本作りは各自が分担して書くという形ではなくて、脚本チーム全員で集まってああでもないこうでもないと話しながら進める「コライト(Co-Write)」型ですよね(リアルサウンド「『HiGH&LOW THE MOVIE 2』脚本家・平沼紀久が語る、“ユニバース化”する物語世界とその作り方」https://realsound.jp/movie/2017/08/post-98575.html)。今回、平沼さんが監督も兼任していたことで、このやり方に変化はあったんでしょうか?

平沼 やり方は同じなんですけど、ほかの3人から「監督次第っすよね」と言われる頻度が高かったですね。今までは、自分たちで書きながら「ここは監督に渡して任せよう」ってやっていたのが、作家チームの中に監督がいるから「やりたい方向にいけますけど? どっちにいきます?」っていう、ちょっと詰められる雰囲気が(笑)。その苦しみはありましたけど、あとは普通に今まで通りのチームワークでした。今回はなんとなく、全体のわちゃわちゃを俺が書いて、クセのある面白い部分を福田が書いて、それを上條がうまく整理して、最後に “泣かせの啓”が泣きの部分を書く役割分担になっていましたね。

 でも今回は、シリーズで一番の難産だったかもしれません。最初は、俺の実体験を踏まえた、SWORDを舞台にしたコメディを書いてたんです。それをHIROさんに見せたら「いや、SWORDから出たほうがいいんじゃない?」ってアドバイスを頂いてロードムービーになって、そこからさらに2回書き直した。

渡辺 迷走しすぎて、1回ゾンビ映画になりかけたよね。

上條 『HiGH&LOW OF THE DEAD』をやろう、っていう(笑)。

平沼 途中で分かんなくなっちゃって、「ゾンビ良くねぇ!?」って。

渡辺 たぶん、初めての長編監督だからプレッシャーもたくさんあって、いろいろ考えた結果ゾンビになったんでしょうね(笑)。そう言い出したノリを全員で止めて、最終的にこういう作品になりました。

——平沼さんはハイローに関してよく取材を受けていらっしゃいますし、その盟友でありシリーズ初期からの相棒として渡辺さんの存在はファンの間で認知されています。一方で、福田さんと上條さんについては、これまでメディアに出られていないので、失礼ながらどういった役割なのか、あらためて聞かせていただけますか?

福田 僕は実は一番最初の「HiGH&LOWとは何か?」っていうくらいの段階から関わっていたんですけど、ドラマシリーズの間は抜けて、『HiGH&LOW THE MOVIE』の終盤からまた加わった形です。

渡辺 最初、「山乃湯」って名前だけつけていなくなったよね。

福田 あと、「無名街」もそうですね。

平沼 「無名街」は違うでしょ! 俺が「名前がないから『無名街』」って言ったんだよ。

福田 違う違う、「無名街」はマジで僕ですよ。僕の手柄、そこしかないからめっちゃ覚えてますもん。

平沼 いや、絶対違う!

——「アレオレ」騒動が(笑)。

福田 あとはドラマシリーズのHulu限定おまけコントの部分を書いていました。『THE MOVIE』の一番大変な時期に「ちょっと来てくれ」と呼ばれて行ってみたら、ノリさんと啓さんが死んだような顔をしてたんですよ。仕方ないから僕は横でHIROさんからの差し入れのケーキ食ってました。

——福田さんはもともと、よしもとの劇場「神保町花月」で舞台を手がけられたり、コントライブを書かれたりと、お笑い畑の方ですよね。それがなぜLDHと関わることになったんでしょうか?

福田 以前、ノリさんが劇団EXILEの若手で舞台をやる企画があって、ノリさんがお願いした作家さんのスケジュールが合わずに、その人の紹介で僕のところに話が来たんです。それで1本書いたんですが、結局企画自体がなくなって。その後に「また新しいプロジェクトがあるので、よかったら入りませんか?」と声をかけられました。それで、まだタイトルしか決まっていないような段階だったハイローに関わり始めた。

平沼 書いてもらったのにやれなかったから、「申し訳ないな」と思ってたんですよ。

——上條さんは今回、脚本のみならず助監督としてもクレジットされていますが、なぜハイローに?

上條 もともと僕は、MATSUさんのやっている松組の映画『KABUKI DROP』(16)の監督をやっていたんです。ノリさんとはそこで接点がありました。ハイローは「すげぇ大変そうだな、絶対関わらないようにしよう」って思いながら横目で見ていた(笑)。高カロリーな現場の匂いってあるんですよ。ハイローからはそれがすごい出てたんで。でも結局、『END OF SKY』『FINAL MISSION』から加わらせていただきました。

——これまで大友啓史監督の『るろうに剣心』シリーズや佐藤信介監督の『アイアムアヒーロー』など、多くの邦画の現場に携わっていらした上條さんから見て、平沼監督のお仕事ぶりはいかがでしたか?

上條 ノリさんはすごいアイデアマンなんですよ。だから、さっきのゾンビの話じゃないですけど、アイデアを放出しすぎてまとまりがつかなくなるときがある。僕は現場あがりの人間なので、それを現場に落とし込めるように角度を調整したりしてました。

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