――ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地
『コンビニ外国人』(新潮新書)
[今月のゲスト]
芹澤健介[ライター]
街のコンビニエンスストアに行けば、かなりの確率で外国人スタッフを目にすることができるだろう。彼らは主に、学生ビザで入国した外国人留学生だという。ある調査によれば、彼ら留学生を含めると、日本は世界第4位の移民流入大国であり、少子高齢化が進む日本の経済は、今後、彼ら移民たちに頼らざるを得ない状況になっているが……。
神保 今回のテーマは「コンビニ外国人」です。データにもよりますが、実は日本は世界4位の外国人が多く働いている国でありながら、建前上、移民政策はとっていません。外国人に頼らないと日本の経済は回らなくなっているのに、5年間と期限のある外国人技能実習制度や留学生のアルバイトなどを抜け穴のように使うという、異常な事態になっています。
宮台 20年以上前から、コンビニで多くの外国人を見かけるようになり、国籍も多様化していることは、みなさんもお気づきでしょう。
神保 ただ、コンビニの従業員は「熟練労働者」ではありませんから、普通の就労ビザは出ない。そうすると、彼らはどういうステータスで日本にいるのか、ということは考えなければいけません。
来年から少し制度が変わりますが、「外国人の労働力をもっと使いましょう」ということをあからさまに謳いながら、「絶対に永住はさせない」という法律のようです。家族を呼び寄せることは許さないと。
宮台 つまり「日本に来たい外国人がたくさんいる」という前提で、それを絞るという発想です。しかし、10年というスパンで考えれば、そういう人はいなくなっていく。そして、労働人口減少の逼迫を外国人労働者で埋める、という戦略が立ち行かなくなり、経済界の意向で政策を進めた結果、その経済界が歪むという、例の図式になるでしょう。
神保 そういうことも含めて、議論していきたいと思います。
ゲストは『コンビニ外国人』(新潮新書)の著者で、ライターの芹澤健介さんです。さっそくですが、「コンビニ外国人」という言葉は、コンビニエンスストアで働いている外国人が多い、ということもそうですが、外国人をコンビニエント(便利な、使いやすい、手頃な、の意)に使っている日本、というような意味もあるのでしょうか?
芹澤 そうですね。ダブルミーニングで、外国人を便利に利用し、労働力として搾取している、という自戒の意味もあります。
神保さんがおっしゃったように、コンビニで外国人をよく見かけるようになり、彼らのステータスはいったいどうなっているのか、という一市民としての疑問から、取材をスタートしました。コンビニチェーンの広報を通して、あるいは個人的に声をかけて、外国人スタッフの方に話を聞いていくと、ほとんどの人が留学生だということがわかったんです。
神保 実習生ではなく、留学生なんですね。
芹澤 今の制度では、実習生はコンビニでは働けません。留学生か、日本人と結婚されている元外国籍の方か、という形が多いのだと思います。
神保 彼らがコンビニで働く理由には、どんなものがあるのでしょうか?
芹澤 工場で働く留学生も多いのですが、コンビニは接客業ですので、日本語を必然的に使うし、また食文化をはじめ、さまざまな日本文化の勉強にもなると。
特に日本に来て1~2年、まだ日本語がそんなに上手ではないけれどある程度わかる、という子たちはコンビニを選ぶ傾向が強いようです。
神保 コンビニ側が外国人を雇う、というのはどのような論理からでしょうか?
芹澤 店長さんやオーナーさんに聞くと、そもそも募集をしても日本人が来ない、という前提があります。現在、東京都の最低賃金は時給958円(10月1日より変更)で、コンビニは960~9 70円からスタートというところが多い。その上、コンビニの店舗数はこの20年で2倍以上に増えているのに、そこで働くスタッフの数は減少しており、一人あたりのタスクの量はかなり増えている。割に合わないんです。
神保 今、コンビニの数は全国で約5万8000店、10兆円を超えるマーケットであると。芹澤さんの本によれば、「セブンイレブン」「ファミリーマート」「ローソン」の大手3社で、外国人スタッフは4万人だとされています。
芹澤 昨日調べたら、セブンイレブンだけで3万5000人というデータもあったので、本を書いた時点よりさらに増えていると思います。
神保 彼らの多くは留学生なわけで、一応、学生ビザで日本に来ているわけですから、通常は週に28時間までしか働けないことになっています。1日4時間というのは生活するには少ないと思いますが、その枠の中に収まっているのでしょうか?
芹澤 原則28時間までですが、例えば夏休み期間だと週に40時間で、一般のサラリーマンとほぼ同じくらい働くことができます。留学生に実際に話を聞いて、「オーバーワークしています」と答える人はまずいませんが、実際に話した感じでは、複数のアルバイトを掛け持ちしている人もいるとは思いました。