Netflixはドキュメンタリーを変える?――刑務所潜入にフォルクスワーゲン批判! 配信される“ヤバい”ドキュメンタリー

――『Netflix』や『Amazonプライム・ビデオ』『Hulu』といった動画サービスでは、地上波で到底見ることのできない過激なドキュメンタリーを数多く配信している。これらのサービスが花盛りとなった今、配信で見られる“タブー破り”のドキュメンタリー作品を紹介すると共に、これらのドキュメンタリーが量産される背景を見ていこう。

『Netflix』の「ドキュメンタリー」カテゴリの充実度は高く、オリジナルコンテンツはもちろん、ドキュメンタリー映画や独自のアルゴリズムによってユーザーの嗜好に合った作品が次々と提示される。

『Netflix』や『Amazonプライム・ビデオ』『Hulu』など、サブスクリプション(定額制)型ビデオ・オン・デマンド(以下、SVOD)が日本でも盛り上がりを見せている。2017年末にICT総研が発表した「2017年 有料動画配信サービス利用動向に関する調査」によれば、有料動画配信サービスの利用者数は1440万人に上り、そのうちSVODの利用者推計は1190万人となっている。先に挙げたサービス以外にも、日本では『dTV』や『GYAO!』『U-NEXT』『ビデオパス』『Rakuten TV』のほか、18年4月には東京放送ホールディングス(TBS)や電通、WOWOWといった6社出資による『Paravi』が立ち上がるなど、まさにSVOD群雄割拠の時代へと突入した。

 こうしたSVODにおいては、日夜各サービス独自のドラマやバラエティ番組が作られ、好評を博している。13年には、Netflixのオリジナルドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』が、SVOD発のドラマとして初めて、アメリカのテレビ界最高の賞とされるエミー賞を獲得。同サービスが全世界で爆発的な広がりを見せる土壌を作り上げた。

 こうしたオリジナル作品の制作はドラマやバラエティにとどまらず、ドキュメンタリーの分野にも波及している。エミー賞の「ドキュメンタリー&ノンフィクション特別番組部門」では、16年に『ニーナ・シモン 魂の歌』、17年に『13th ―憲法修正第13条―』と、Netflixのオリジナル作品が2年連続で受賞。さらに、Netflixのオリジナル作品ながら、短期間の劇場上映をへることで、映画界の最高権威とされるアカデミー賞を獲得する事態も起こっている。17年には「短編ドキュメンタリー映画賞」を『ホワイト・ヘルメット』が、18年の「長編ドキュメンタリー映画賞」を『イカロス』が獲得した。

 このように、ドキュメンタリー分野においても、SVOD発コンテンツのクオリティの高さは証明されつつある。

 実際にSVODのドキュメンタリー・ジャンルを覗いてみると、まず過激なコンテンツが並んでいることに耳目を惹かれるだろう。報道記者が自ら囚人となり刑務所に潜入して、撮影を行った『潜入! 世界の危険な刑務所』や、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題やイギリスの大手銀行HSBCと麻薬カルテルの癒着といった事件を深掘りした『汚れた真実』など、日本の地上波ではまず見られないような“タブー破りのドキュメンタリー”が目に飛び込んでくる。

 本稿では、SVODで過激なオリジナルのドキュメンタリー番組を作ることができる理由について、そのビジネスモデルから探っていく。

ロングテールに適したSVODとドキュメンタリー

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.11.22 UP DATE

無料記事

もっと読む