――才色兼備なイメージが強い女子アナウンサー。しかし現在、美人で賢いだけでは生きていけない業界に様変わりしている。日本テレビの水卜麻美、フジテレビの山﨑夕貴の人気の一方で、正統派美人として人気を博した加藤綾子がフリー転身後に苦戦しているこの状況。そんな激動する女子アナ界の新戦国時代に迫る。
カトパン、ショーパン、ミタパン……。フジテレビ伝統の○○パンを受け継いだ三人だが、その後の運命はバラバラ。結局、アヤパン以外は活躍できてない気も。
2月に発表された「週刊文春」(文藝春秋)による“好きな女子アナランキング”で、日本テレビの水卜麻美が史上初の5連覇を達成した。確固たる地位を築き上げた今でこそ、彼女の栄冠に対して何の違和感も抱かないが、冷静に考えてみれば女子アナの概念はここ数年で大きく変わった。水卜以前の女子アナランキングといえば、フジテレビの高島彩や加藤綾子を代表とした、美人アナが人気を博していた。清楚かつ知的。タレントではないものの、決して手の届かないあこがれの存在。しかし、水卜アナのイメージといえば、それとは真逆だ。愛嬌こそあるが、失礼ながら決して誰もが一様に賛同するほどの美人ではない。グルメロケで大口を開ける姿は、清楚とはかけ離れたものだ。同ランキングで、過去最高位の4位にランクインしたフジテレビの山﨑夕貴も同様に、ダメ女ぶりをいじられている上にビジュアルひとつ取ってみても、彼女がスターアナになることは一昔前では考えられなかっただろう。
女子アナに詳しいライターの丸山大次郎氏は、水卜アナの登場により女子アナの需要が大きく変わったと分析する。
「今視聴者が求めているのは、美人なことよりも気さくさや愛嬌なんですよね。やはり象徴的だったのは13年に水卜アナがオリコンのランキングでカトパンを倒したことですよね。正直、翌年にはカトパンが1位に返り咲くと思っていたんですが、水卜アナの人気は本物でした。オリコンはほかのランキングと違って、老若男女の支持を幅広く集めないといけない。男性人気だけでなく女性に嫌われないことも大きいです。17年の明治安田生命による“好きな上司ランキング”で7連覇中だった天海祐希を破ったのも衝撃でしたね。そっちでは今年で2連覇してますけど、まさか女子アナが1位になるとは思ってもみなかった。
また、山﨑アナの人気も彼女がつくった流れがあってこそだと思います。普通は結婚したら人気が落ちるものですが、スポーツ選手や実業家ではなく、うだつのあがらない若手芸人・おばたのお兄さんと結婚したことで、かえって好感度も上がりましたよね。高嶺の花だった女子アナに、身近さというものが求められているのだと思います」
もはや美人であれば、あとは文字さえ読めればいいという時代ではない。バラエティ番組での活躍が目立つ両アナウンサーに共通して言えるのは身近さ。そこにきらびやかさは必要なく、より視聴者に近い素朴な一面が求められているのだ。例えば、17年のオリコンランキングを見てみると、2位にNHKから今春フリー転身した有働由美子、そして3位にテレビ朝日の大下容子といった40代後半のアナウンサーが上位にランクインしているのも特徴的だろう。彼女たちが人気を得ているのも、そうした身近さがあってこそと言えるだろう。