――南北首脳が握手を交わし、友好ムードがたかまる朝鮮半島。そもそも南北の分断など、われわれは彼の地についての今を正確に知っているだろうか? 冷戦による分断から韓国の独裁政権とそこで起きた事件、歴代大統領の謎の死や、日本を動かした在日人脈などのキーワードで彼の地を捉え、今後の東アジアを読み解くための本をラインナップしてみた。
朝鮮戦争以来、数々のいざこざを起こしてきた板門店。韓国側から北朝鮮側を望む。
2018年4月27日、朝鮮半島は歴史的な日を迎えた。大韓民国(以下、韓国)の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の金正恩朝鮮労働党委員長が、南北分断の象徴である軍事境界線付近で会談し、互いに歩み寄ることを明言。いわゆる「板門店宣言」が発表された。この宣言のインパクトは、戦前・戦後で歴史が分断する日本社会においては、なかなか理解されにくい。
朝鮮半島は「冷戦構造から世界で唯一脱却できていない場所」である。もしくは、大国同士のパワーバランスや利害を保つため、「脱却させてもらえない場所」と言ったほうが正しいだろうか。日本が敗戦を迎えた1945年8月は、朝鮮半島の人々にとって植民地から解放された記念すべき月となった。しかし、その後間もなく朝鮮戦争が勃発。“冷戦の最前線”となり、ソ連崩壊後の新しい世界秩序の中でも、過去の思想や対立構造にとらわれ続けている。
朝鮮戦争勃発から約70年間、半島に流れた血や涙の量はおびただしい。戦争の犠牲者数は、当時の朝鮮半島の人口の6分の1にあたるという。民族同士が激しく殺し合った惨劇は、南北の人々の考え方を硬直させてしまった。最近まで、両国間には事あるごとに軍事的事件が絶えず、若い兵士や民間人の犠牲者が発生し続けている。
朝鮮半島には、南の兵士、もしくは北の兵士に家族の命を奪われて、今なおその憎しみを抱いて生きている人々がたくさんいる。そういった恨みを清算して、思想で民族を分けることなく、次の時代に進もうというのが、朝鮮半島に所縁のある人から見た「板門店宣言」の意義である。
そのように捉えると、少し感傷的に過ぎるだろうか。もしかすると、「板門店宣言」も南北為政者たちの政治的パフォーマンスで終わる可能性もある。今後の朝鮮半島問題をどう読み解くか。おそらくその答えは、読者の皆さんの立場によって異なるだろうが、ここではその歴史を知るために参考になりうる本をいくつか紹介していきたい。
東西の対立で朝鮮半島が犠牲に