【神田松之丞】『電話の折り返しが遅い人は講談師にはなれません』話芸の天才から学ぶ“仕事術”

――不忍池の真ん中で睨みを利かすこの男、天才講談師でありながら、絶滅寸前の“講談”を広めるべく、テレビにラジオにと緻密に戦略を立て露出を増やしていく野心家でもあり……。

(写真/有高唯之)

「右手に鎖を操ると、その先についた分銅をブンブンブン、ブンブンブンブン唸りを生じて振り回し始めた そのうちに、ビャァーンと打ち込んでくるこの早いのなんの……」木製の机を前に、着物姿の男が宮本武蔵と虚無僧の対決を額に汗して物語る。テレビに釘付けになった。4月7日、『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ)を観ていた時のことだ。

「自分で放送を観て、『青臭い芸だな』と思いましたけど、印象に残るとは思いましたね」

 しれっと言うこの男、講談師・神田松之丞という。自前の「釈台」と呼ばれる机を「張り扇」で叩き、調子を取りながら軍記物など歴史物語を語る「講談」は、落語と同じように寄席で披露される演芸の一種である。江戸時代から続く伝統芸能の世界で松之丞は今、二ツ目ながら「最も独演会のチケットが取れない男」と言われる存在だ。

「以前(三遊亭)円楽師匠が『ENGEIグランドスラム』に出た時、すごく評判がよかったのをツイッターで見ていました。世の中が、昔みたいに『伝統芸能?』って斜めから見る感じじゃなくなってきているんだろうな、と。なので、オファーをもらったときには、失敗しなければハネるだろう、と思いました」

 そして実際にそうなった。放送後、ツイッターのフォロワー数は3000人近く増え、独演会や出演のオファーが次々舞い込んだ。

「出演者の中では、僕が一番得したなと思いますね。講談って、“笑い”で勝負してないんですよ。漫才やコントの人たちと同じ土俵で争っていないのもよかったんでしょうね」

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2024.11.22 UP DATE

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