希子の炎上から見えてくる日本のジェンダーギャップ――あえてアラーキーに噛みついた!? インスタ炎上姫・水原希子の研究

――フォロワー数498万人を抱えるインスタで突如、写真家・荒木経惟に噛みついた女優の水原希子。なぜ彼女はこれほどまでに炎上するのか? そしてなぜ炎上してなおファッション誌・広告に引っ張りだこなのか? 本誌連載陣にして「乙女心」を探求し続けるライター稲田豊史が、フォトジェニックすぎる彼女の魅力を徹底考察する。

(イラスト/サイトウユウスケ)

Kiko's Profile

[Kiko's Spec]
ミズハラキコ 1990年生まれ(27歳)本名オードリー・希子・ダニエル。父はアメリカ人、母は韓国人。テキサス州ダラス生まれの神戸育ち。日本語、英語、韓国語の3カ国語を話すトリリンガル。

[Kiko's Career]
中学生時代に「Seventeen」からモデル活動をスタート。「ViVi」や「MAQUIA」の専属モデルを経て、現在では国内のみならず、ニューヨーク、ミラノ、パリのファッションウィークでもモデルとして招待されるほか、ここ数年は資生堂、パナソニック、三井住友カード、サントリーといった大手企業のCMにも続々起用されている。この3月には、パルファン・クリスチャン・ディオールのアジアアンバサダーにも就任した。

[Kiko's Connection]
インタビューでは「マック・デマルコの自宅に行った」「ジ・インターネットのアルバム収録に遊びに行った」等、界隈に通じた人間なら「マジかよ」と声を上げざるを得ないセレブエピソードもさらっと口にする。

[Kiko's Curiosity]
カルチャー面の素養も隙がない。この若さにして山下達郎へのリスペクトを公言し、好きなアーティストに細野晴臣や矢野顕子の名前も挙がる。20代前半の頃にはオードリー・ヘプバーンがイットアイコンで、映画監督ではパク・チャヌクやウォン・カーウァイと仕事がしたいとも発言。


 「荒木さん、あなたにとって女性とは一体何なんですか?」

 この4月、モノ申すモデル・女優の水原希子が、写真界の神・アラーキー(荒木経惟)に噛みついた。彼から不当な扱いを受けたモデルKaoRiの叫びを受け、インスタグラムのストーリー機能で、自らの#MeToo体験(下段の別表【8】)と共にぶちまけたのである。

 神をも恐れぬ発言が可能なのも、上記の希子スペックを見れば一目瞭然。希子がモデルとしてトップ・オブ・トップの地位にいるからだ。インスタ時代の申し子にして2010年代最高の被写体・水原希子。彼女なくして、現在の日本で「写真」を語ることはできない。

 その実力は現場でも折り紙つき。同い年で希子とも親交があるモデル・ローラとの比較について、表紙に起用したことのあるファッション誌の編集者はこう語る。「ポージングや表情を作る技術は、希子のほうがずば抜けてうまい。ハイブランドを着こなす能力もある」。さらに広告の現場でも「現場のクリエイター(プランナー、ディレクター)受けが抜群にいい。とにかくフォトジェニック。被写体としてのかっこよさが圧倒的」(広告代理店社員)。

 インスタグラム(@i_am_kiko)のフォロワー数は498万人で国内第2位と、そのファッショニスタとしての影響力は絶大。インスタ写真から垣間見えるグローバルなコネクションは、パリピワナビーから常に憧れの的だ。

 言うまでもなく希子フォロワーの大半は女性だが、それは希子のファッションセンスのみならず、男性に媚びない「自分を貫く」スタイルにも惹かれてのこと。希子は2017年に映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』にヒロイン・天海あかり役で出演しているが、希子の信条とは真逆の役柄。インタビューでは「そういうこと(モテ)とは全然違う方向で生きてきた自分があかりを演じるのはすごく面白くて、全国のモテ好きの男性たちにはザマアミロっていうのも込めて演じたかった(笑)」(「Sweet特別編集 天海あかりstyle book」宝島社)と発言し、男性に決して媚びない希子イズムを改めて世に叩きつけた。

 希子のフェミ成分も、女子受けする理由のひとつ。「FRaU」(講談社)16年10月号では山口智子と「異分子の美学」と題して対談し、親子ほども年の違う山口から「希子さん」と敬意を表され、従来の枠にとらわれない女性の生き方について大いに意気投合。山口といえばその後同誌の17年3月号で「子供を産まない幸せ」を主張して物議を醸した、フェミ界隈・ジェンダー界隈での有望株であり、2人の精神的な結束が希子のフェミ素質を示唆しているようで興味深い。

“生きる力が弱い”男にとことん嫌われる希子

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