――もともとウェブ事業に進出したかったというSMAP元マネージャーの飯島三智氏の手腕もあり、見事なウェブ戦略で話題を呼んでいる「新しい地図」。そうした状況に業を煮やしたのか、ジャニーズ事務所でもこれまでご法度としていたウェブ事業に進出している。果たしてその狙いは? ジャニーズと新しい地図という2つの勢力を比較してみよう。
■老獪なテクニックでゲリラ戦をしかける【新しい地図】
蝶のように舞いハチのように刺す恵比寿面
今年1月、ニュースサイトへの写真掲載許可が発表。あのジャニーズが“ついにインターネットの軍門に下った”衝撃は、ファンのみならず、朝日新聞や日本経済新聞などでも報道され、社会的なニュースとして、日本列島を駆けめぐった。
本誌読者ならご存じの通り、ジャニーズ事務所はこれまで頑迷にインターネットと距離をおいてきた。「肖像権に配慮」するとして、ウェブにタレントの顔写真が掲載されることを認めず、記者会見に登壇したメンバーの写真は不自然なまでに排除。それどころか、ドラマや映画のホームページでは、ジャニタレだけが写真の非掲載、もしくはイラストによる掲載という謎の対応を制作側に迫ってきた。NOTTVで配信された『Sexy Zone CHANNEL』(フジテレビTWO)などわずかな例外はあるものの、ウェブに対するその態度は“ガラパゴス”を貫いてきた。
しかし、そんな強硬な態度に変化が訪れたのが17年。タレントが出演するテレビCMをフェイスブック、ツイッター、GYAO!といったメディアで配信することを許可したのを皮切りに、11月にはNetflix配信のオリジナルドラマ『炎の転校生REBORN』にジャニーズWESTのメンバーが出演。12月にはV6岡田准一が「世界一のクリスマスツリー PROJECT」に合わせて、ジャニーズタレント初となるLINEライブの配信にも登場した。同時期には、木村拓哉のLINEスタンプも期間限定で発売となった。
そして1月からは、各ニュースサイトで、関ジャニ∞の錦戸亮、V6の井ノ原快彦、嵐の相葉雅紀らの記者会見の模様が掲載。また今年3月、KAT-TUNのファンクラブイベントをLINEライブで生配信。極めつきはジャニーズJr.のYouTube公式チャンネルを開設するなど、ウェブ解禁を加速させる一方だ。
こうした背景には、元マネージャー飯島三智氏に率いられた「新しい地図」の動きが影響しているというのがもっぱらだ。芸能界の掟を破り、「帝国」に反旗を翻した3人は、地上波での活動が激減。それを見越してか、ウェブ上で積極的なプロモーションを展開している。もともと飯島氏は、ジャニーズ在籍時からウェブ上での活動を考えていたと言われ、その見事な手腕で、現時点ではネット戦略を成功に導いているのだ。
一方で、公式ホームページ「ジャニーズネット」は、今でも15年前のような古臭いデザインのまま……。ジャニーズに精通するある編集者は、その背景を次のように語っている。
「副社長のメリー(喜多川)さんは、ウェブは子どもと高齢者には使えないという前提のもと、ウェブでの活動を極力避けてきたんです。そのため、他のアイドルヲタに比べてジャニヲタは、ネットでのヲタ活はあまり活発ではなかった」
このような態度について、『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)などの著書がある矢野利裕氏は、ジャニーズ文化に脈々と流れる、ある思想を見る。
「ジャニー喜多川氏にとって、タレントは『芸術家』で、普通の人と同じ目線であってはならない。だから、舞台上ではたっぷりとパフォーマンスをファンに堪能させるけど、それ以外の場面では徹底的にシャットアウトする。それによって、ジャニーズはアイドルとしての『ファンタジー』を維持してきたんです。ウェブの『みんなで盛り上がる』という文化ではなく、スターが圧倒的なパフォーマンスを見せつけることこそが、ジャニーズが求める表現の核となってきました」
ユーザーと垣根なしでつながることができるウェブとは、そもそも相容れないということだ。
ユーチューバー草彅、視聴回数が心配……