[語句解説]「ドパミン仮説」
『統合失調症(よくわかる最新医学)』(主婦の友社)脳内の神経伝達物質であるドーパミンが過剰に排出されることにより、統合失調症の諸症状が発生するのだ、とする説。ドパミン系の作用を抑制する抗精神病薬が統合失調症の症状を抑えることなどからこの説が唱えられたが、現在では、それだけが統合失調症の「単独要因」ではないのではないか、いう形で否定されている。
統合失調症は、代表的な精神疾患です。以前の精神科医は、この病気を「早発性痴呆」(エミール・クレペリン)、「精神分裂病」(オイゲン・ブロイラー)などと呼びましたが、現在は「統合失調症」で統一されています。
前時代において統合失調症は、多くは思春期から20代に発症し慢性的に病状が進行して回復が見られず、最終的には痴呆状態に至ると見なされていました。ところが最近になって、このような考え方は改められてきています。というのも、リハビリテーション医療の充実や非定型抗精神病薬と呼ばれる治療薬の進歩によって、多くの患者が目覚ましい回復を示し、通常の社会生活を営む者も多く見られるようになってきているのです。こうした流れに伴い、この病気に対する考え方も変化してきているわけです。
一般に「統合失調症」とひとくくりにされることが多いですが、実はこの病気にはさまざまなサブタイプが存在します。症状も経過も多様であることが、統合失調症の特徴といってよいのかもしれません。
激しい興奮状態を示すものから、幻聴や被害妄想が活発なもの、あまり目立った症状はないにもかかわらず社会適応が悪く自閉的な生活を続けるケース。あるいは普通に社会で仕事をしていたり出産して子育てをしたりしている者がいる一方で、精神病院に長期入院し、そこで人生の大半を過ごすような者も珍しくはない。さらには、重い症状が持続するため長期にわたり保護室を使用しているような方も決してまれではないのです。