出版業界において「マンガしか売れない」と言われて久しく、雑誌、ウェブプラットフォームともに、その媒体数はいまだ増え続けている。そんな中、媒体とのいざこざも絶えず聞こえてくるが、マンガ家たちは今、どこで描きたい/描きたくないと思っているのか? ここではマンガ家たちに話を聞き、その本音に迫った。
メディアミックスやウェブマンガの隆盛など、今なおマンガ産業は発展を続けている。しかし、光あるところには当然影もあり、最近ではマンガ界のネガティブな話が聞こえてくることも珍しくない。2017年にはマンガ家の佐倉色が「少年エース」(KADOKAWA)連載時に起こったいざこざを赤裸々に描いたマンガ『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』(飛鳥新社)を刊行。同年12月末には、NHN comicoが運営するマンガアプリ「comico」の連載作家が運営側の対応をツイッターで批判し、ほかの作家からも賛同の声が上がる事態となった(告発された事実について、comico側は公式に否定)。
こうした作家と媒体側とのトラブルは後を絶たないが、そんな中でもマンガ家たちが“描きたい”と希望する媒体、“描きたくない”と感じている媒体とは一体どんなところなのだろうか? 匿名を条件に何人もの現役マンガ家に話を聞き、その本音を探ってみた。
まず、“描きたいマンガ雑誌”として名前が挙がったのはやはり、少年マンガ誌の王者「週刊少年ジャンプ」(集英社)。
「チャンスがあるなら、一度は『ジャンプ』で連載してみたいです。やっぱり“ジャンプ”という名前への憧れもありますし、箔も付く。ただ、個人的には、出世志向の編集者が多いイメージの『少年ジャンプ』より『ウルトラジャンプ』で描きたい。『少年ジャンプ』の編集者は基本的に作家任せですが、『ウルトラジャンプ』の編集者はマンガのことが大好きで、作家の描きたいものを大事にしてくれる印象があります。
それと、『ウルトラジャンプ』には荒木飛呂彦先生が連載してるのも大きいですね。マンガ家にとって、自分が好きな先生と同じ媒体で描けるっていうのはとてつもない喜びです。オノ・ナツメさんや荻原一至さんもいるので、ぜひ連載してみたい雑誌です」(40代男性マンガ家・A氏)