前記事『あの時代の空気感は今の若者に伝わるのか?――『リバーズ・エッジ』の性と死に共感!?肉食系女子が読む岡崎京子マンガ』で『リバーズ・エッジ』が描いた時代やその後世への影響を総括したが、今の若者は同作に何を思う? クラブでキワどい衣装をまとって踊り、アクティブな“性活”を送るGO-GOダンサーたちに読んでもらった。
――読んでみて、どうでしたか?
かれん 面白かった。岡崎京子ってマンガ家は知らなかったけど。
AKARI エグい系のマンガは共感できるから好き。人が燃えるとか。
かれん 私も歪んだ世界観のが好き。
EMI 映画の『ヘルタースケルター』っぽいと思ったら、同じ作者なんだ。
AKARI りりこ役の沢尻エリカが好きで、最近『ヘルタースケルター』の3回目を観たけど、原作は読んだことがない。これ、10巻くらいで読みたかったな。
かれん 一つひとつの事件がサラッと描かれているから、もっと細かいところを知りたいよね。
――20年以上前のマンガですが、古さは感じなかった?
AKARI へぇ、登場人物は『よくある』って感じだけど。
かれん 幽霊が出るってウワサも、地元の川崎であったなぁ。ウチの中学の後輩が多摩川で土手飲みをしていて、罰ゲームで川に落とされて死んだんだけど、そこに幽霊が出るという話があって。
EMI いしだ壱成さんの話が出てくるとか、そういう古さはあるけどね。
かれん メンヘラがいて同性愛者がいて……どれも今ドキ。ロン毛もまたはやり始めてるから、逆に今っぽかったり。
EMI 中高生の頃、『これ、やったらヤバイな』ってわかるけど、やっちゃうことがあった。怖いもの見たさというか。そういう思春期の感じがよくわかる。
妊娠するルミちんはシャブ中の友達と似てる
君島かれんちゃんも登場する磯部涼著『ルポ 川崎』(サイゾー)でも、『リバーズ・エッジ』に言及されている。なお、2015年2月、川崎区の多摩川河川敷にて中1殺害事件が起きた。
――変わったキャラクターがたくさん出てきますが。
EMI そうかな。さっきAKARIも言ったけど、みんな、そのへんにいそう。パッと見、非現実的かもしれないけど、こういうのあるって思う。それを描くのが、この作者はめっちゃうまい。
かれん 高校生はこんなもんじゃないかな。まあ、ウチは高校行ってないんだけど、中学時代もこんなもんだった。いじめ、コカイン、テキトーなセックス……全部あったし。地元の先輩から昔の話を聞いたとき、今よりもっとハードだったんだと思ったけど、こんな感じなんだね。それに私、マンガのキャラの気持ちに入り込むのが得意だから、大体わかった。いじめてる側の気持ちはわからなかったけど、ハルナ、山田君、こずえの気持ちはわかる。
AKARI 私の友達のゲイの子も、高校のとき、『みんな付き合ってるから』という理由で、好きでもないのに女の子と付き合ってて、山田君みたいだった。こずえちゃんを見て、摂食障害の子の話を思い出したよ。ルミちんみたいに援交やってる子もたくさんいたね。それは中学のときですけど……大体、中学生じゃないですか、そういうことするの。オジさんと付き合ったり、男に遊ばれて捨てられたり。でも、これ、ケータイがない時代ですよね。どうやって援交してたのか謎。化粧品とかモノを買ってもらうというのもよくわからないな。私たちの時代は一回ヤッて終わりだったから、その場でお金をもらったほうがいいのになと。
かれん 妊娠しちゃうのも、友達と似たパターンだった。その子はシャブ中で、『誰の子かわからない』って言ってて、そっくりかよって思いました。
EMI ルミちんはあのお姉ちゃんがいたから、援交したり化粧品を買ってもらったりして、対極に行こうとしたのかな。
AKARI オタクのブサイクなお姉ちゃんはパンチ効いてたね。あれはイヤだ。
EMI でも、今は、腐女子でも良しとされてるよね。女優やアイドルが腐女子だと、逆に親近感が湧くくらい。もうみんな隠してないし、むしろそれで食ってる人がいる。昔の腐女子は、こんなに悪いイメージがあったんだね。
AKARI 昔っぽいといえば、ルミちんが日記を書いてるところは古い。
EMI 日記は病的な感じがするよね。今だったら、ツイッターでサブ垢つくって発散する。そのほうがパッと書けるし。
――嫌いなキャラクターは?
かれん 一番気持ち悪かったのは、観音崎。ちょっとセックスしたくらいで『オレの女』呼ばわりして。しかも、彼女の友達とヤッちゃうのも気持ち悪い。弱い者しかいじめないヤツは大体弱いんだよ。
AKARI 私も観音崎はマジで無理。ウザすぎて死んでほしい。最後、山田君が殺せばよかったのに。
かれん そうそう、観音崎が死体になったら面白かった。
EMI でも、言ってみれば観音崎は普通の子だと思う。山田君やこずえは、死体を見に行くことで発散してるけど、観音崎はクスリとかセックスとか、普通の発散方法しかないじゃん。思考回路が単純だし。こういう子が、キレたときに人を殴り殺しそうになったりする。
かれん ハルナは早く別れればよかったのに。ウチだったら、すぐ別れるな。でも、ハルナが観音崎に処女を捧げた理由はめっちゃわかる。この人が好きというわけじゃなくて、セックスしてみたかっただけ。私も同じだった。まあ、処女なのに首を締められたけど(笑)。
EMI 私も、主人公のハルナに超共感。私自身、昔は周りから一歩引いた目で見て不思議に思うことが多くて。印象が一番薄いのは田島さん。共感もできなければ否定もしないけど、普通すぎ。私も高校のとき、嫉妬深い子から男関係で恨みを買って、ネットの掲示板にめちゃくちゃ書かれたよ。
かれん 田島さんはザ・メンヘラだね。後輩にヤリマンのメンヘラがいるんだけど、眠剤(睡眠導入剤)を飲んで、一晩で男4人ハシゴしたり、ツイッターに手錠をかけてる写真をアップしたりしてる。「メンヘラがかわいい」と思ってるファッション・メンヘラもいるんだよね。
EMI 田島さんは山田君が好きなんじゃなくて、自分が好きなんだろうね。そういう子は今でもいっぱいいると思う。
――死体を“宝物”とする点は?
かれん 死体はビックリした。さすがに人間の死体は見たことない。ウチの知り合いが人を殺しちゃって、死体を埋めて逮捕されたことはあったけど。
EMI 私は小さい頃、家でおばあちゃんが首を吊って自殺してるのを見ちゃった。不思議だったけど、怖くはなかった。そういうことはあっても、死体が転がってるってことはないかな。どんな治安が悪い町なんだ……。
――舞台は川崎という説もあります。
かれん へぇ、そうなんだ。地元だけど、あまりピンとこないかな。ウチの中学は、どっちかというとそんなに荒れてなかったし。友達が学校でシャブやってセックスしてたくらいで。その子は『痩せたいからシャブやるわ』って始めたんですよ。それでキメセクにハマった。そういう子はわりといたけど。
――ちなみに、ウィリアム・ギブスンというアメリカのSF作家の詩を引用したページもありますが……。
AKARI そんなの、あったっけ? 難しいから飛ばしちゃった。
かれん 私も、途中まで読んだけど、漢字が難しくて、よくわからなかった。
EMI こういうの、今の少年マンガにもよくあるから、何も思わなかったな。
かれん 終わり方も不思議だったね。
AKARI そう、意味深っていうか。
EMI まあ、その意味はあんまりわからないけど、全体的に面白かったよね。
映画版の主題歌はオザケンより椎名林檎!
――映画は観てみたいですか?
全員 観たい!
――主題歌を小沢健二が書いたことが話題となっています。
かれん 誰それ? 知らなーい。
AKARI 明るい曲の人でしたっけ?
かれん 闇が深そうな歌がいいと思うな。
EMI これは椎名林檎だろって思った。女が歌うのがいいな。
AKARI そうだね。鬼束ちひろとか、そういうミステリアス系がいい。
EMI 主題歌もピンとこないけど、キャストのパンチも弱くない?
AKARI 『ヘルタースケルター』はかなり前から『沢尻が脱ぐ』と話題になってたけど、これは地味だよね。原作を読んでいない人も観たいと思うのか……。
EMI マンガを読んだほうが、観てみたいと思うよね。
かれん マンガ以上に、ドロッドロな映画が観たい!
(構成/亀井百合子)