加藤:この場を借りて言っておきたいことがあります。原点に立ち返ると、LDHの皆さんにアクション・スター的な活躍を要求している僕はノイジーマイノリティーなんです。LDHの皆さんの本業は歌手でありダンサーですから、あんまり危険なアクションで怪我しないでほしい。アーティストとしての彼らを応援しているファンが本来いるわけで、その人たちを一番大事にしてあげてほしいですから。お体だけはどうぞ大事に…【6】ですよ。
【6】伝説的ロックバンドBOOWYの3rdスタジオ・アルバムに収録された「CLOUDY HEART」の一節。ボーカルのヒムロック(氷室京介)が昔同棲していた彼女との思い出を綴った1曲。
藤谷:でも、逆に外野からそこに気を使われすぎるのも、本人たち的にはどうなんでしょう。「全部できるのがLDH」みたいな、体育会系的精神というか。そこまで目配せをするのが逆に失礼ではないかという気持ちもある。我々がノイジーマイノリティーであることは間違いないですが。
加藤:とにかく、それくらい心配になる領域に来てるので、ここはゆっくり休んでいただいて。
藤谷:ここで一回区切りをつけるのは、いい選択なんでしょうね。でも今後の展開は想像してしまいます。
加藤:『スターウォーズ』みたいに、何十年か後に「エピソード1」が急にできるとか。
藤谷:ヤング龍心さんが主人公の、九龍前日談?
加藤:龍心さんたちが巣鴨プリズンで出会った若き日の……。
編集部:そこまでの年齢ではなくないですか?
加藤:あの世界の第二次世界大戦は、終わるのがちょっと遅かったかもしれない。
藤谷:なるほど? 1945年に終戦してるとは限らないですね。
編集部:なら、そのヤング龍心さんをAKIRAさんにやってほしいです。それで九龍とMUGEN・SWORDはやっぱり似ていたんだというのを示す。
藤谷:では黒崎を青柳さんに……? 夢が広がりますね、本当にMUGENですね。
加藤:次なる展開として、マンガやアニメもまたやってほしいですね。
藤谷:個人的には細川先生版の『HiGH&LOW』をもう一度やってほしいです。ヤンキーマンガの文法で描かれた『HiGH&LOW』を読みたい。
編集部:我々編集部は最近「TBS版ハイローを作ってほしい」と盛り上がりました。
加藤:意味がわからないですね。
編集部:キャストに誰もLDH所属の俳優がいないバージョンです。TBSの磯山(晶)プロデューサーが「設定を借りたい」ってLDHに頼むんですよ。そうするとHIROさんは懐が広いので、OKを出してくれるんです。キャスティングは琥珀さんが妻夫木聡さんで、ハイローファンが「ぜんぜん琥珀さん感がない!」ってめちゃくちゃ叩くんだけど、龍也さん役が高橋一生さんで、彼の演技で説得力が出て「これはこれでありかも……」って揺れ動くんです。コブラは山崎賢人さん、ヤマトは竹内涼真さん、ノボルが坂口健太郎さん。たて笛尾沢だけ天野浩成さんのままで。楽しそうじゃないですか。全部妄想ですけど。
加藤:ちょうど今アメリカで同じようなことやってますよ。たとえばDCコミックスの「フラッシュ」というキャラクターなんですけど、ドラマ版のフラッシュ(演/グラント・ガスティン)がいるのに、今度『ジャスティス・リーグ』【7】で映画版のフラッシュ(演/エズラ・ミラー)が出てくるんです。そういう感じで、いろんな俳優がひとつの役を演じるのはありだと思う。
【7】現在公開中の「全員超人」なアメコミ実写化映画。バットマンやスーパーマンといったDCコミックスのスーパーヒーローが一堂に会する。
藤谷:それだったら、アニメ『HiGH&LOW』がCLAMP先生版とは別にできて、人気声優が声を担当するという案もあるのでは。『エグザムライ戦国』のアニメだって、本人以外の人が声を担当していましたし。HIROさん役が稲葉徹ですから。あとは舞台版も観てみたい。佐藤大樹さん(チハル役)が主演をつとめた『錆色のアーマ』【8】という「逆2.5次元」コンセプトの舞台もありましたし、LDHとネルケの関係性を考えたらありえそうです。
加藤:ハイローを今後いろんな形で浸透させていった結果、気がついたら「『HiGH&LOW』という原作があって、それをEXILEの皆さんで実写化する」みたいな未来が来るのかもしれません。
編集部:どういうことですか?
加藤:現在のハイローがあって、そこからアニメやマンガやTBS版?とかいろんなものができる。それらを経て、『新HiGH&LOW』が生まれるんです。
藤谷:待ってください。『新HiGH&LOW』ってなんなんですか、加藤さん。
加藤さんが解説する『新HiGH&LOW』図。
加藤:現在のハイローからマンガやアニメ、ハリウッド版とかいろいろ生まれていった結果、やがて一番古い『HiGH&LOW』は忘れ去られてしまうんですよ。ガンダムで、最新作は知っているけど、旧作には触れてない人がいるみたいに。さかのぼって全部観る人もいるでしょうけど、もとになった『HiGH&LOW』を知らない人が出てくるし、派生作品のほうが人気が出てしまう事態が生じるわけです。
藤谷:たとえば2.5次元舞台版ハイローが覇権をとって、「染様のロッキーがすごい」「北村諒のKIZZY最高だわ」みたいな感じになるんですね? ゲーム版『HiGH&LOW』が海を超えてめちゃめちゃヒットするとか、アニメ版がヒットしすぎてそっちのほうにハリウッドから実写の依頼が来るとか。
加藤:そういうのが当たって、『HiGH&LOW』というコンテンツとしてお金は入ってくるんだけど、LDHの方々が「ちょっと俺ら元祖なのに、負けてんじゃねえか?」ってなって奮起して、再び実写版の『HiGH&LOW』を作る。
【8】17年6月に上演された舞台。舞台版を原作として、そこからアニメをはじめとするメディアミックス展開を図っていくという実験的な企画。2.5舞台の達人ネルケプランニングだからこその発想か…?
藤谷:なるほど、『HiGH&LOW THE ORIGIN』ですね。マンガ版、アニメ版しか知らない人は「え、マジで実写化すんの?」でしょうね。
加藤:「え? スモーキーを窪田正孝が演じるの?」「林遣都が日向? 俺、解釈違うわ」とか。そうやって無印『HiGH&LOW』の存在が再び脚光を浴びる。忠臣蔵のようなものになっていくんですよ。……こういう妄想はこっちで勝手にやりますから、LDHの方々には己の「カッコイイ」を追求してもらいたいです。
藤谷:そこにつきますね。重ね重ね「ありがとう」と言いたいです。『HiGH&LOW』って、映画を観るたびにドラマ版を観たくなりません? 昨年の対談でも言いましたけど、私は最初はドラマ版にピンときてなかったクチなんです。でも今回ザム3の横浜アリーナイベントで観て、帰宅して速攻でhuluを立ち上げてドラマ版を見直しましたもん。最初はわりと文句を言ってたドラマ版を、こんなに愛しく思えるとは……。こんなコンテンツ、なかなかないですよ。
加藤:僕は『ザム』から入ったクチなので、1年くらいですか。まったく、最高の映画体験だった……。
藤谷:ほんと、ハイローがあると退屈しねえわ。
(構成/斎藤岬)
アマゾンで予約受付中!
【加藤よしき×藤谷千明】対談は12月6日発売のハイロー考察本でもお楽しみ頂けます!ぜひご覧ください!
<プロフィール>
加藤よしき
ライター。1986年生まれ。「Real sound」などで執筆。『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』(洋泉社)に寄稿。
ブログ:http://blog.livedoor.jp/heretostay/
twitterID:@daitotetsugen
藤谷千明
ヴィジュアル系とヤンキーマンガとギャル雑誌が好きなフリーライター。1981年生まれ。執筆媒体「サイゾー」「Real sound」「ウレぴあ」ほか。
twitterID:@fjtn_c