ローラ、西内まりや、真木よう子…女性タレントたちはなぜ事務所と揉めるのか?

『ローラ スタイルブック『ROLA'S CLOSET』』(宝島社)

 事務所とタレントの間のトラブルが目立つ最近の芸能界。来年での引退を発表した安室奈美恵(40)も「引退の背景には事務所との契約問題に不満を持つ安室が引退で事務所との関係を一旦、白紙に戻すためのもの」といった話まで伝えられている。

 タレントのローラ(27)は2020年まで結ばれた契約書には、「有効終了後も10年間、自動更新されることになっていて、これは不当拘束に当たるとして契約終了を求める申し入れをしているという。まだ解決を見ないまま、ローラは母親や兄と一緒に新事務所を立ち上げ、独自にタレント活動を再開。今後は裁判に発展する可能性もあるという。その他にも、女優の真木よう子(35)は映画の降板をめぐり事務所と一触触発の状態。歌手の西内まりや(23)は事務所とのトラブルで関連会社の社長をビンタしたと報道された。「社長がタレントを叩くという話は聞きますが、逆はあまり聞かない。それも女性がビンタとは」と業界内からも驚きの声があがっている。前代未聞のビンタ事件はさらなるトラブルに発展すると言われている。こうしてみるとなぜか女性タレントばかりが事務所とトラブルを起こしている。

「右も左を知らないまま芸能界に入り、最初は事務所の言われたとおりに動くが、次第に周囲から雑音が入る。契約内容のおかしな点や金銭問題などが発端になる。特に女性は契約などにうといから、後に知り合いからの助言でわかることが多い。悪意のある事務所は女性のほうが騙しやすいという背景もある」(芸能関係者)

人気歌手だった鈴木亜美は「こんなに売れているのに、他の歌手に比べギャラが安い」と不満をぶちまけ、鈴木の父親が乗り出し、裁判沙汰になったこともあった。さらに大きな事件に発展したケースも過去にある。

 1976年、「涙の太陽」などヒット曲を飛ばした、クオーターの彫りの深い顔とセクシーな体型で男性ファンを魅了した歌手・安西マリアの事件は芸能マスコミをも震撼させる大事件となった。所属していた事務所は六本木のマンションの一室。「社長に取材に行くときは絶対に1人で行くな」と言われる人物だった。社長は自他ともに認める広島の元暴力団幹部。映画『仁義なき戦い』の登場人物の一人のモデルになったほどだ。巨体に鋭い眼光。ドスの効いた声で「もう堅気だよ」と言われても、彼の一声で兵隊はいくらでも集まると喧伝されていた。話をしているだけで怖さがヒシヒシと伝わってくるようだったのを覚えている。安西との契約も奴隷のような内容。話し合いなどで済む相手ではないと察知したのか、安西は恋仲になっていた担当マネージャーと逃亡を図った。引退覚悟の逃避行だったが、事件はそれだけで終わらなかった。社長の安西に対する恐喝事件にまで発展。裁判沙汰にまでなった。逃亡先からそれぞれ出廷したマネージャーと安西。マスコミは裁判後の居場所を確認すべく、前代未聞のカーチェイス。今では考えられないが、安西の車を追うマスコミの車はざっと20台。著者は四番目の車にいた。居場所を隠すため必死に逃げる安西の車。追う車。ドラマで犯人の車を追うパトカーのようなシーンが都内で繰り広げられた。逃げる車は信号が黄色になるのをのろのろ運転で待ち、突然スピードを上げて突っ走る。それでも何台かは信号無視で突破するが、後続の車は赤で引っ掛かり続々、離脱。残ったのは4台になったとき、さらなるハプニングが起きる。踏切の遮断機が下りる直前で彼女の車が突っ切った。後に続いた先頭の車が踏切に入った途端、遮断機が降りた。追跡どころではない。みんな車を降り、遮断機を持ち上げ難を逃れたが、その時点で見失い追跡は終わった。

 そんなハプニングまで引き起こした安西の逃避行は安西の引退で決着。安西はマネージャーと結婚し、ハワイで暮らした。

「引退したとはいえ、日本で暮らせば社長の仕返しが恐かったのでは」と言われていた。だが、その事務所もやがて解散。事件は喧嘩両成敗のような形で決着を見た。

 その後、安西は離婚して日本に戻り、六本木のライブハウスなどで歌っていた。何度か店で会い親交を温める機会があった。「あの時は私も必死だったのよ」と酒を飲みながら昔話に花を咲かせたが、安西は60歳の時、急性心筋梗塞で亡くなった。

 事務所とタレントのトラブルは絶えないが、残るのは遺恨だけ。それを歴史は教えてくれている。

(敬称略)

二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。

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