大型シネコンとミニシアターの共存――幽霊、文化の墓泥棒が集う映画館で。

――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

映画興行を効率化したシネコンだが、人の欲望は多種多彩なので、非効率な選択肢も効率化していく必要がある。

 今回の本誌特集は映画だが、気がつけば大型シネコンも飽和状態で、4DXやらIMAXやら、新しい視覚効果技術を競っている。もっとも、技術の進歩も考えもので、専用の高価な映写システムを導入しなくてはならないから、大型シネコンはチキンレース状態になっている。だからこそ特権性が生じるのだろうが、個人的にはそこまで必要かと思う。3Dのように何度導入しても定着しない技術もあるのだから。正直、映画に於ける3Dは、ディズニーランドのアトラクション扱いだった短編映画『キャプテンEO』くらいが限界で、より個人的な娯楽――ゲームでのVR技術に回収されていくような気がする。

 立川にシネマシティという中規模独立系のシネコンがあるが、このシネコンの売りは極上爆音上映&極上音響上映だ。もともと、吉祥寺にあったバウスシアターという独立系映画館が始めた爆音上映だが、その効果は『マッドマックス 怒りのデスロード』のようなロックなバイオレンス映画や、『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』のような音楽ライブ映画で最大限に発揮される。もともと、シネマシティはTHXという厳しい映画音響規格で認定されていることを売りにしていたが、その方向性をさらに推し進め、専門家によるウーファー増設などで音響効果を最大限に高めている。もっとも、規格自体は厳密だが、専用の機器は必要ないため、ドルビーステレオ導入後――『時計じかけのオレンジ』以降の著名な作品なら、過去のアーカイブを生かせる利点もある。言い換えると、特権性のある名画座になり、視覚効果技術よりは疲労感も少ないので、気に入った映画を何度も観るリピート客も多くなる。さすがに『ガールズ&パンツァー 劇場版』の異様なロングラン上映は『怒りのデスロード』の「V8を讃えよ」以上に宗教めいていて怖いが。

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2024.11.24 UP DATE

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